CGアニメコンテストが35年の歴史に幕 新海誠、吉浦康裕、石田祐康ら輩出

映画

 国内で自主制作されたコンピューターやデジタルのアニメーションを上映し、優れた作品を顕彰してきた「CGアニメコンテスト」が、2023年の第32回をもって終了する。長年、コンテストを運営してきたDoGAが、2023年12月に公式X (旧Twitter)にて明らかにしていた。
 これを受けて2024年1月7日に「さよならCGアニメコンテスト =入選作品全部見せます!=」が開催され、YouTubeで配信された。配信イベントには関係者や過去の入賞作家も出演。それぞれの時代を代表する作品を解説や過去の入選作品全564本を紹介した。

 「CGアニメコンテスト」は、1989年、国内のアニメーションのほとんどがアナログであった時期にスタートした。制作の情報や交流の場、さらに作品を鑑賞する機会も少なかったなかで、CGアニメの文化の盛り上げに大きな役割を果たした。
 また映画祭やアニメーションコンテストの多くがアート志向を重視するなかで、そうした作品だけでなく、エンタテイメント性の高い作品や時には一発ギャグ的な作品も評価してきた。ジャンルの広さが特徴とされた。

 こうした環境のなかから、日本を代表するアニメのスタッフも多く輩出している。『君の名は。』や『すずめの戸締まり』で世界に名を馳せる新海誠の初監督作品『彼女と彼女の猫』は、2000年に「CGアニメコンテスト」でグランプリとなり注目を浴びた『彼女と彼女の猫』だった。
 同コンテストからグランプリが出ることは稀で、このためグランプリ以外の入賞者にその後大きな活躍をするクリエイターが数多かった。『イヴの時間 劇場版』、『アイの歌声を聴かせて』といった商業作品で活躍する吉浦康裕は2002年と03年に、『ペンギン・ハイウェイ』の石田祐康は2010年、今年『クラユカバ』と『クラメルカガリ』を監督する塚原重義は2013年に入賞といった具合だ。

 しかしここ10年ほどは、運営体制の変更が続いていた。長らく東京の会場で受賞式と上映会をしていたが、2012年に発表の場を京都国際マンガ・アニメフェアに移し、上映会を分離。その後、2015年、2017年、2018年はコンテストが開催されていない。
 2020年からは京都国際マンガ・アニメ大賞と統合され、この一部門となっていた。最後のコンテストとなった2023年は、京都国際マンガ・アニメ大賞CGアニメコンテスト部門として実施されている。
 CGアニメコンテストがかつてほどの勢いを失くしたのは、CGアニメを巡る環境の変化もありそうだ。インターネットが発達し、動画配信が普及して作品発表の手段も事欠かない。現在は、自主制作作品を上映する場はかつてほど切迫して求められていないのかもしれない。CGアニメのクリエイターもYouTubeなどの動画配信サイトの投稿をきっかけにデビューすることも増えている。しかし、そうした文化の盛況もCGアニメコンテストのような存在があってこそ築きあげられたのでないだろうか。

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