IT大手のサイバーエージェントは、IT分野でのAI開発を積極的に推進してきた。そのAI活用技術の新たな注力分野としてアニメーション制作に狙いをつけた。
2023年10月4日、サイバーエージェントは自社AI事業本部内に「アニメーションAI Lab」を新設したことを発表した。「アニメーションAI Lab」はアニメーション制作における生成AI研究開発に取り組む。
研究開発領域は画像・映像生成やモーション生成、音声合成・BGMほか幅広い分野とする。アニメーション制作の新たなプロセス構築を目指すとしている。
サイバーエージェントはIT分野の大手で、動画配信メディアやインターネット広告、ゲームなどを幅広い事業がある。
近年はアニメの企画・製作にも進出しており、2017年にCygamesと共同出資するアニメ投資の「CA-Cygamesアニメファンド」を組成、2020年にはアニメ事業本部を立ち上げた。アニメの企画・製作・出資を通じて、配信プラットフォーム事業やゲーム事業、ライセンス運用などとの連動を目指している。2023年からはメディアミックスプロジェクト「テクノロイド」の軸となるテレビアニメ『テクノロイド オーバーマインド』などの大型作品も製作している。
IT分野においては次世代技術の活用に積極的で、2016年にはすでに「AI Lab」を立ち上げている。ここではAIを活用した広告効果の最大化、生成AIによる広告クリエイティブ制作プロセスの再開発などに取り組んでいる。
「アニメーションAI Lab」では、「AI Lab」の技術とノウハウを新たにアニメに結びつける。アニメ作品の背景美術、キャラクターデザイン、キャラクターの動き、さらに音声やBGMの制作プロセスを研究することで、生成AIを活用した制作プロセス構築が可能性を追う。
生成AIは、人工知能(AI)を活用することで様々なコンテンツを学習し、生み出す機能と仕組みである。生成できる対象は文章や画像、動画、音声、音楽など多岐にわたる。ここ数年の急激な技術発達で、映画やアニメーション、ゲーム、マンガ、音楽などエンタテインメント分野でも関心が強まっている。
特にアニメについては、国内産業において深刻な人材不足が続いており、生成AIを利用することで現状を改善できるのでないかとの期待もある。
サイバーエージェントはアニメビシネスの新規参入者であるが、AIノウハウもある。この分野にいち早く乗り出し、業界内での優位を築こうとの狙いがありそうだ。
しかしエンタテインメント分野の生成AIでは、著作権保護が大きな課題だ。既存コンテンツに類似した作品などの生成などがある。サイバーエージェントは不正利用や類似性検知などの技術も合せて研究するとしている。
著作権問題に加えて、現在のスタッフ・クリエイターの理解、ファンに受け入られる作品を生み出せるかなど課題は少なくない。生成AIの実装と普及は、そうしたことが今後の鍵になりそうだ。