2016年12月3日、第38回ヨコハマ映画祭の日本映画ベスト10と2016年日本映画個人賞の各賞がヨコハマ映画祭実行委員会より発表された。このうち11月12日に全国公開された片渕須直監督の『この世界の片隅に』が作品賞、2016年日本映画ベスト10の第1位に選出された。また個人賞には審査員特別賞として、主人公・すずの声を演じた女優の のん が選ばれ、3冠に輝いた。
ヨコハマ映画祭は映画好きの有志により1980年にスタート。企業スポンサーをつけない運営と確かな作品選出で、数ある映画賞のなかで個性を発揮している。映画の公開規模に捉われることなく、日本を代表する作品、監督、俳優、スタッフを顕彰している。しかし38年の歴史のなかで、作品賞、ベスト10第1位にアニメーションが選ばれるのは初となる。
『この世界の片隅に』は、こうの史代のマンガを原作に『マイマイ新子と千年の魔法』、『アリーテ姫』で知られる片渕須直が監督した。第ニ次世界前後の広島・呉を舞台に女性すずの生活を描いた。
企画から8年、クラウドファンディングによる製作の実現などが話題で、公開後、その作品を高く評価する声が相次いだ。公開初週より2週目、2週目より3週目の動員が多いなど、口コミによる広がりも注目されている。
日本映画ベスト10では、中野量太監督の『湯を沸かすほどの熱い愛』(第2位)、真利子哲也監督の『ディストラクション・ベイビーズ』(3位)など、多くの傑作をかわしての1位である。またベスト10には、第9位に新海誠監督『君の名は。』がある。第4位にはアニメ映画でもお馴染みの庵野秀明監督による『シン・ゴジラ』と、近年、存在感を増すアニメの勢いを感じさせる。
審査員特別賞の のん は、能年玲奈から改名後の初の仕事となった。主人公すずの声がはまり役として、こちらも高い評価を受けている。ヨコハマ映画祭では、受賞理由を“『この世界の片隅に』の作品世界を決定づけた声音の魅力を称えて”としている。
『この世界の片隅に』以外では、『ディストラクション・ベイビーズ』が新人監督賞、主演男優賞などで6冠、『湯を沸かすほどの熱い愛』が監督賞、脚本賞などで3冠に輝いている。
また特別大賞に庵野秀明氏が選ばれた。こちらは“「シン・ゴジラ」において示したファンタジックにして日本社会のアクチュアリティを撃つ作劇術に驚きと敬意を表して”としている。
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