国内主要放送局のテレビ朝日ホールディングスの2023年3月期の連結決算は、売上高は微増の3045億6600万円(2.1%増)だった。利益面では営業利益が32.2%減(145億300万円)、当期純利益166億300万円(20.9%減)と冴えなかった。
しかしアニメなどコンテンツ事業については動きがあった。もっとも大きかったは、2022年7月のアニメ・ゲーム事業部の立ち上げだ。
近年、アニメ事業を強化する放送局は多いが、テレビ朝日HDもそのひとつである。専門部署の立上げで、アニメ・ゲーム事業へ積極進出、特に海外ビジネスでの拡大を目指す。
そうした取り組みは早くも成果が出ている。この4月にスタートした『僕の心のヤバイやつ』は、深夜アニメ枠「NUMAnimation」の作品としては海外販売で過去最高金額を実現した。またアニメーション制作を手がけた子会社のシンエイ動画が、これまでファミリーキッズが中心だったことも含めての大きな変化だ。
アニメ・ゲーム事業部を管轄するのは、番組制作が中心となるコンテンツ編成局になる。番組制作のウィングを伸ばすかたちでのアニメ、ゲームである。
しかしテレビ朝日の事業多角化は、さらに幅広い事業を視野に入れる。一つはメタバースで、同じ22年7月には、コンテンツ編成局にメタバース部も設立されている。
もうひとつは書籍・マンガである。テレビ朝日HDは2023年4月に、電子書籍・マンガ配信の大手BookLiveに出資して持分適用法関連会社化としている。ここではIP創出や次世代クリエイター育成、オリジナル作品のアニメ化、映像化を掲げている。単純なコンテンツビジネス拡大だけでなく、自社コンテンツ創出も視野に入っていると考えていいだろう。
ただしテレビ朝日のアニメ・ゲーム事業単体の売上や利益は公表されていない。テレビ放送事業のなかに含まれているとみられるが、テレビ朝日のアニメビジネスは他局よりやや出遅れている印象があり、事業の管轄も実際は分かり難い。
ただテレビ朝日のアニメビジネスは新規参入というわけでも、決して小さいわけでもない。シンエイ動画は古くからの子会社で、『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』をアニメーション制作する老舗だ。シンエイ動画の23年3月期の業績は売上高、営業利益とも過去最高であった。
テレビ朝日は両作品に出資し、23年3月期も『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』 、『映画ドラえもんのび太と空の理想郷』が好調。出資映画からの売上げは39億9600万円前年比140.1%増にもなった。
今期は『クレヨンしんちゃん』の映画はフルCGの『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』になり上映時期も従来のゴールデンウィークから夏休みに動く。さらに黒柳徹子の著作をもとにした劇場アニメ『窓ぎわのトットちゃん』の公開も控える。今期も引き続きアニメ関連事業では大きな挑戦が続く。