国内映画最大手の東宝が2023年2月期通期決算を、4月13日に発表した。23年2月期は「収益認識に関する会計基準」を新たに採用したことで数値にぶれはあるものの、前期比で増収増益と堅調な業績となった。
連結売上高は2442億9500万円(7%増)、営業利益は448億8000万円(12.3%増)、経常利益は478億1500万円(11.7%増)、当期純利益は334億3000万円(13.1%増)。
映画事業が増収増益となったほか、一部コロナ禍の影響が残ったなかで演劇事業が増収増益と復調基調にある。不動産事業はオフィス市況が厳しさを増す中で空き室率を1%以下に抑えることで、こちらも増収増益だった。
映画事業のうち映画営業事業の製作部門では期中に『すずめの戸締まり』、『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』、『キングダム2 遥かなる大地へ』、『シン・ウルトラマン』など19本を共同製作した。このうち『すずめの戸締まり』の期間中の興行収入が143.6億円になるなど大ヒットにつながっている。
配給部門は東宝で25本、東宝東和で18本を配給する。東宝東和の『トップガン マーヴェリック』が137億円と大ヒットになっている。
映画興行事業では自社配給作品のほか『ONE PIECE FILM RED』、『THE FIRST SLAM DUNK』の大ヒットもあり、前年比で売上げが23.2%増と大きく伸びている。
また映像事業では、TOHO animationの『僕のヒーローアカデミア』、『SPY×FAMILY』、『BLUE GIANT』の製作出資や『劇場版 呪術廻戦 0』のパッケージ販売、国内外の配信・商品化権収入などが大きかった。ODSでは『「刀剣乱舞-花丸キャラクター-」~雪月華~』、『BLUE GIANT』がヒットした。
今期の東宝は、映画事業内の収益元の売上げ区分も明らかにしている。最も大きいのは劇場における興行で710億5400万円、さらに配給が268億1500万円。またアニメコンテンツ利用が175億3000万円、劇場映画の国内配信が33億4100万円と、新分野からも着実に収益があがっていることが分かる。
もうひとつ23年期2月期の決算発表は、アニメ事業の業績をこれまでより詳しく説明しているのが特徴になっている。これはアニメ事業を経営の4番目の柱と位置づけたためだと見られる。業績を開示することで、その成果を問うことになる。
2023年2月期のアニメ事業の売上高は、254億7600万円だった。これはTOHO animationレーベルの事業にあたる部分で、映画営業事業の配給、映画興行事業の劇場収入は含まない。通期売上高は414億4200万円あった前期に比べて38.5%減少となった。前期は大ヒットとなった『呪術廻戦』があったが、その反動が大きかった。特にキャラクターライセンス、商品物販、劇場公開などに影響があった。
アニメ事業で好調だったのは配信で、売上げ93億5300万円で30.2%増。『SPY×FAMILY』の貢献が大きい。キャラクターライセンスは62億8200万円(23.1%減)、商品物販が25億2900万円(36.9%減)、劇場公開が33億4000万円(72.2%減)である。パッケージの26億300万円(68.3%減)は、『ウマ娘 プリティダービー Season2』の反動が影響した。
また国内外の売上比率も明らかにしている。国内売上げはアニメ事業全体の65.2%で166億1200万円で、海外比率が34.8%で88億6400万円だった。
2024年2月期のアニメ事業は、引き続き積極的な製作投資とその成果が期待される。主要タイトルは第2期が夏にスタートする『呪術廻戦』、第2期に加えて劇場映画が12月に公開する『SPY×FAMILY』、『葬送のフリーレン』、『薬屋のひとりごと』などになる。『呪術廻戦』では、ゲーム『呪術廻戦ファントムパレード』のリリースも期待される。さらにその先には、期待作『怪獣8号』のアニメ化も控えている。
劇場配給でもアニメ作品は大作や話題作が並ぶ。『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』、『君たちはどう生きるか』、『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~』、『きみの色』、『屋根裏のラジャー』、『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』と現時点で7本になっている。