
2025年6月17日、『攻殻機動隊』や『ハイキュー‼』などの人気アニメで知られるIGポートはキャラクター大手のサンリオと資本業務提携契約を締結した。この資本業務提携契約に基づいて、IGポートはサンリオを割当先とした第三者割当を実施する。またこれに合わせて創業者で代表取締役社長である石川光久氏と石川氏の資産管理会社である株式会社i.styleの株式放出による普通株式の売出しも実施する。
第三者割当では1株1750円で92万9100株を発行し、IGポートは約16億円の資金を調達する。16億円のうち10億円を運転資金として、サンリオとの共同プロジェクト、クリエイターの人材交流、新規人材の獲得、それに作品の製作投資に向ける。
約6億円は設備投資に回す。制作管理システム更新やインフラ整備に充当するとしている。CGアニメ制作、コンピュータを使った画像処理、ネットワークやサーバの制作環境、工程やデータの管理等、情報インフラの整備などが対象だ。
第三者割当、売り出し後は、主要株主が異動する。現在主要株主の第1位で20.2%の株式を保有する石川氏の持ち株比率は18.9%に下がる。また株式保有第2位で並ぶ電通グループ、日本テレビ放送網も持株比率をそれぞれ9.85%に下げる。サンリオは4.98%保有の株主となり、現在第4位のNTTドコモと並ぶ見込みだ。
今回の資本業務提携についてIGポートは、多様なIPを創出する事業基盤構築の一環と説明する。またサンリオは世界的に人気のあるキャラクターを多く持ち、グローバルに事業を展開している。現在はキャラクターの人気分散を実現することで、業績の変動を減らした安定成長を目指している。資本提携を通じて両社はそれぞれの戦略を実現し、持続的な企業価値の向上が実現できると判断する。
具体的な取り組みは、映像作品の実現になる。IGポートはサンリオが保有するキャラクターを映像化、放送・配信を行うことで、キャラクターの国内外での認知度のアップを図る。またIGポートのグループ会社が制作する作品のキャラクターを活用した事業に取り組む。さらに新規作品・キャラクターの共同創出・開発・取得、育成で協業する。北米を中心に海外ニーズを捉えた映像作品制作を検討する。
IGポートとサンリオは、今回の資本業務締結前からすでに協力関係にある。今年7月からグローバルプラットフォームの大手Netflixで独占配信する『My Melody & Kuromi』に共に参加する。本作ではサンリオの人気キャラクターのマイメロディとクロミに基づいてIGポートの制作会社ウィットスタジオがストップモーション・アニメーションで映像化した。
業務提携でも、こうした取り組みが念頭にあるとみていいだろう。サンリオの人気キャラクターをベースにIGポートのアニメ制作会社が映像化をする。
サンリオはキティやマイメロのような人気キャラクターを多く抱えるが、これまで映像展開はかなり少なかった。ストーリーが豊かな映像作品がキャラクターのイメージを限定することを避けていたとみられる。しかしIGポートとの協業で、アニメを通じた認知度の向上に期待をした映像推進に舵を切りそうだ。映像化のリスクになる作品クオリティは、実績の高いIGポートグループの制作で担保出来る。これが大株主になる理由でもある。
IGポートにとっても人気キャラクターを活用とした映像化は、安定したヒットが期待できる。業績の向上と安定に近づく。今回の資本業務提携は、有力コンテンツ保有者と有力制作会社のWin―Winの関係を見据えた強者連合とも言えそうだ。