■出版・映像・ゲーム好調、ポータル運営・教育苦戦
エンタテイメント大手のカドカワの2019年3月期第2四半期の決算は、連結売上高・営業利益とも前年並みであったが事業セグメントごとに明暗が分かれた。
好調だったのはデジタル配信事業が成長している出版、そして海外や配信、ランセンスが貢献した映像・ゲーム事業である。しかし動画配信プラットフォーム「niconico」を中心としたウェブ事業は苦戦して赤字に転落した。
第2四半期までの連結売上高は1021億2900万円、0.6%増と前年同期とほぼ変わらずだ。営業利益も0.2%増の28億6400万円。一方で経常利益は39億3400万円(29.4%増)、当期純利益は21億1900万円(21.1%増)である。
■電子書籍・雑誌が利益を拡大
売上高の半分を占めるのが出版事業である。紙書籍・紙雑誌は伸び悩んでいるが、電子出版の好調に牽引されて利益を伸ばした。売上高は550億7900万円(1.2%増)、営業利益が30億300万円(25.1%増)。
電子書籍は外部電子書籍ストアの取り扱いの増加、さらに自社デジタルマーケットの「BOOK☆WALKER」の販売が伸びている。ユーザーあたりの購入金額が上昇したほか、海外向けの「BOOK☆WALKER Global」「台湾BOOK☆WALKER」が高い成長となった。紙書籍・雑誌の依存から、電子書籍・雑誌販売、版権事業、海外展開と収益の多角化が成功している。
■アニメは海外ライセンス販売が牽引
映像・ゲーム事業も利益を伸ばした。売上高は238億900万円 3.2%増)、営業利益25億3200万円(34%増)だ。
映像はアニメ関連が好調だった。ここでも海外ビジネスが広がっており、『STEINS;GATEゼロ』『殺戮の天使』『オーバーロード』の海外ライセンス販売が大きかった。アニメの配信収入が堅調で、『Re:ゼロから始める異世界生活』の商品化許諾も収益に貢献した。
ゲームは『DARK SOULS REMASTERED』が国内外で好調。新規タイトルだけでなく、『Bloodborne』『DARK SOULS Ⅲ』の海外ロイヤリティ収入も大きかった。
■ニコニコプレミア会員の減少続く
一方で苦戦したのがWebサービス事業である。売上高は138億2800万円と10.2%の減少、これにより第2四半期までで1億円の営業損失と赤字に転落した。事業の柱であったニコニコプレミアム会員の減少が響いた。第2四半期の有料会員は194万人と200万人の大台を割っている。
今後は双方向性のあるサービスの拡充と、既存サービスの改善で有料会員数の増加と都度課金の増収を目指す。
アニメ関連の強化も大きな施策だ。アニメ情報をアニメポータル「Nアニメ」に集約し、アニメ配信やコラボ企画を強化することで、ユニークユーザーを拡大した。前第3四半期には月470万であったユニークユーザーを直近で700万まで増加させたが、これをさらに推し進める。通期では10億円の利益を見込む。
教育・スクール事業を中心とするその他事業も赤字幅が2億1200万円から9億9900万円に拡大している。売上高は11.2%増の112億7600万円だったが、2020年から収益化を目指すインバウンド事業の準備費用の計上が響いた。