■Disney+初のアジア太平洋地区イベント開催
ウォルト・ディズニーが配信プラットフォーム「Disney+」向けに、アジア太平洋地域で制作された独自コンテンツを豊富に準備していることが明らかになった。2021年10月14日、ウォルト・ディズニー・カンパニーは都内にて「Disney APAC Content Showcase 2021」を開催した。Disney+がこうしたイベントをアジア太平洋地域で実施するのは今回が初となる。
これは10月27日に日本で新ブランド「スター」がスタートするのに合わせたもの。Disney+ではこれまでディズニーグループの各社ディズニー、マーベル、スター・ウォーズ、ピクサー、ナショナル ジオグラフィックのブランドで配信をしてきたが、「スター」ではそれ以外の作品がラインナップされる。そのなかの目玉となるアジア太平洋での作品を今回発表した。日本のほか韓国、台湾、インドネシア、中華圏など広い地域からの作品で、オリジナルだけで18タイトル全部で20以上にもなった。
■Disney+が日本アニメで独占、『ブラック★★ロックシューター』『四畳半』など
日本からは実写ドラマと並んで、アニメも大きなコンテンツになった。この場で新作アニメシリーズ『ブラック★★ロックシューターDAWN FALL』、『四畳半タイムマシンブルース』、『サマータイムレンダ』のDisney+での世界独占配信を発表した。いずれも2022年にスタートする予定だ。
Disney+はこれまでも自社コンテンツを原作にした日本アニメを配信している。9月には日本のアニメスタジオが制作したオムニバス『スター・ウォーズ:ビジョンズ』がリリースされ大人気となった。しかしグループ主要ブランドでDisney+を展開してきたことから、ライバルとなるNetflixやHBO maxのように一般の日本アニメはラインナップしてこなかった。
イベントに登壇したアニメーション責任者の八幡拓人氏は、「ディズニーが持つIPを超えてパートナーシップを組み世界に向けて発信していく」と話した。またオリジナル コンテンツのエグゼクティブ ディレクターである成田岳氏は「ディズニーはディズニーだけじゃない」と強調する。アニメだけでなく、ドラマやバラエティも含めた全体の方針とみていいだろう。
アニメ導入にあたっては独占配信だけでなく、新たなビジネスチャンスも探る。『四畳半タイムマシンブルース』では、製作のフジテレビ「ノイタミナ」と協力して劇場版公開も視野にいれる。またDisney+だけのオリジナルエピソードも予定するという。
それでも今回の『ブラック★★ロックシューターDAWN FALL』『四畳半タイムマシンブルース』『サマータイムレンダ』は、既存の企画をDisney+が独占タイトルとして囲い込んだ面が強そうだ。今後はNetflixやアニメ専門のクランチロールのように、どこまでオリジナル企画に乗り出すか注目される。
■配信プラットフォームのアニメ獲得競争、さらに激化
オリジナル企画も含めて、Disney+としての差別化も必要になる。そこで重要になってくるのが逆にディズニーならではのタイトルである。
ウォルト・ディズニーは13日、アニメ分野でもうひとつ大きな発表をしている。スマホアプリゲーム「ディズニー ツイステッドワンダーランド(ツイステ)」のアニメ化企画である。ツイステはディズニーアニメーションの敵役からインスパイアされたイケメンが活躍する学園アドベンチャーゲームで、ディズニーキャラクターの魅力をたっぷり盛り込んだ。2020年にリリースし、女性を中心に大人気となっている。
ゲームはディズニーとアニプレックスが共同製作しており、アニメでもアニプレックスと協力する。『鬼滅の刃』や「Fate」シリーズといった大ヒット作の多いアニプレックスだけにその展開が期待される。
いずれにしても巨大エンタメ企業の日本アニメ本格参入は、国内アニメ業界に大きなインパクトを与えそうだ。現在でも激しさを増しているプラットフォーム間の作品獲得の競争はさらに激化する。それはアニメーション制作のニーズを拡大し、人材不足問題にも影響するだろう。
■注目される実写ドラマ、グローバル競争の勝ち残りを目指す
日本のオリジナルコンテンツは、アニメだけではない。今回明らかにされた日本の実写テレビドラマは『TOKYO MER~走る緊急救命室~』、『拾われた男』、マンガ原作の『ガンニバル』の3作品。『TOKYO MER~走る緊急救命室~』はTBSの人気ドラマの配信で、ここでも既存の有力パートナーとの協力が打ち出されている。
ただし国内実写には強力なライバルが立ちはだかっている。今回は日本での発表にもかかわらずトップで紹介されたのは韓流ドラマの数々だ。その数は7作品、日本の倍以上だ。Netflixでも韓流ドラマはグローバルに人気を獲得しており、こうした作品に隠れないインパクトを残せるかが、日本の実写番組の未来を左右しそうだ。
また今回の発表では日本、韓国に続き、インドネシアから7作品、中華圏から5作品が紹介された。そこからはディズニーが番組制作とユーザー獲得で、どの地域に力をいれているかが窺われる。
「Disney+」
https://disneyplus.jp/