山田尚子、京アニ後の初監督に「平家物語」 制作サイエンスSARU

平家物語

『平家物語』がテレビアニメとして制作されることが発表された。『映像研には手を出すな!』『DEVILMAN crybaby』『夜明け告げるルーのうた』など数々の傑作アニメを世に送りだしてきたサイエンスSARUがアニメーション制作を担当する。
 また監督の山田尚子の起用が、サプライズになっている。山田尚子は京都アニメーションで「けいおん!」シリーズや映画『聲の形』、『たまこラブストーリー』といった話題作を監督してきた。いずれもファンの支持が高いだけでなく、作品の高い評価も特徴になっている。前作の『リズと青い鳥』までは京都アニメーションに所属、同社の制作で監督している。『平家物語』は山田尚子が京都アニメーションを離れての初の監督作品になる。
 脚本では『けいおん!』で山田と共にスタッフだった吉田玲子、キャラクター原案に『絶対安全剃刀』などの漫画家・高野文子、音楽に牛尾憲輔、キャラクターデザインに小島崇史など、実力派のスタッフが並ぶ。かなり気合が入っていると言っていいだろう。

 『平家物語』は1200年代に成立した日本の古典文学、武士である平清盛が策謀入り乱れる朝廷で成り上がり、平氏一族が栄華を極めるが、これに対抗する源氏に攻められ滅びる。よく知られる源平合戦の題材でもあり、たびたび映像化もされている。
 今回は古川日出男訳に基づき、アニメのオリジナルキャラクター琵琶法師の少女・びわを主人公に平重盛、徳子らとびわの交流を軸に物語が展開する。
 サイエンスSARUは同じ古川日出男の『平家物語 犬王の巻』の劇場アニメの公開も来年に控えている。こちらの監督は鬼才・湯浅政明、日本を代表するふたりの監督の共鳴も関心を呼びそうだ。

 『平家物語』はビジネス面でも話題がある。本作はテレビ放送に4ヵ月も先駆けて、2021年9月15日からフジテレビの映像配信プラットフォーム「FOD」で先行配信する。海外はファニメーションとビリビリが同じタイミングで世界同時配信する。
 テレビ放送は1月からフジテレビ深夜のアニメ放送枠「+Ultra」などが予定される。国内ではフジテレビ・FODによる独占性の高い枠組みが取られている。
 これまでこうした枠組みはNetflixオリジナルアニメで見られたものだ。今回は国内放送局のフジテレビが配信サービスを軸にこれに挑む。アニメビジネスの新しい潮流となるのかが注視される。

アニメ『平家物語』
2021年9月15日よりFODにて先行独占配信
2022年1月よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて放送
https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/anime/ser5h19/

原作:古川日出男訳 『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09 平家物語』 河出書房新社刊
監督: 山田尚子
脚本: 吉田玲子
キャラクター原案: 高野文子
音楽: 牛尾憲輔
アニメーション制作: サイエンスSARU
キャラクターデザイン: 小島崇史
美術監督: 久保友孝(でほぎゃらりー)
動画監督: 今井翔太郎
色彩設計: 橋本賢
撮影監督: 出水田和人
編集: 廣瀬清志
音響監督: 木村絵理子
音響効果: 倉橋裕宗(Otonarium)
歴史監修: 佐多芳彦
琵琶監修: 後藤幸浩

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