(後編)変わるトムス・エンタテインメント、「UNLIMITED PRODUCE」が目指すアニメの総合プロデュース ―執行役員・篠原宏康氏に訊く―

篠原宏康氏

■外部スタジオとの協力、これまでとの違い

数土 「UNLIMITED PRODUCE」で現在具体的に進んでいるプロジェクトはありますか?

篠原宏康氏(以下、篠原)―――まだ発表できないタイトルが多いのですが、いま決まっているものだけで7作品あります。異世界、アクションもの、SFもの……、今までトムスで出来なかった作品にもトライしています。

数土 第1弾として発表された『バイオハザード:インフィニット ダークネス』は、どういったきっかけで始まったのですか。

篠原―――私が前職のソニー・ピクチャーズ時代から「バイオハザード」の実写、CG映画に関わっており、カプコンさんと親しくさせていただいてました。カプコンさんで「バイオハザード」の新しいCGアニメーションを作りたいと意向がありました。私のほうから映画でなくNetflixで配信にトライしてみませんかと話すことでスタートしました。制作費が桁違いなのでNetflixともかなりタフな交渉をしました。

数土 今回は映画でなくミニシリーズです。

篠原―――当初からシリーズでと考えていました。ただ制作に時間がかかりますので、まず4話でスタートしています。今回はカプコンさん100%出資で、トムスが制作・営業業務などを受託しています。Netflix配信のあとのビデオグラム、商品化もハンドルしています。企画から制作、それから販売、管理まで一貫してトムスがプロデュースするかたちです。

(C)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

数土 制作会社のQuebicoは、本作が元請け第1作ですね。

篠原―――マーザ・アニメーションプラネットのプロデュース部長だった宮本(佳)さんが独立して作られた会社です。前作の映画『バイオハザード:ヴェンデッタ』も宮本さんが制作プロデューサーでしたので、実績も信頼もありました。CGは作画と違って制作の初期に資金がかかるので、機材調達などを我々のほうでサポートしたりしました。

数土 協力スタジオがトムスと組む具体的なメリットは?

篠原―――制作費を必要以上に高くすることはお互いの利益ではないと思います。ただ、うまく行った時やいい作品を作った時は、それに見合う報酬をきちんと払いたいという方針です。成功報酬といったインセンティブを設けています。それはトムスが取るのでなく、スタジオにお支払いする。
スタジオによっては早い段階から資金が必要となる場合もありますし、当たった時に大きく戻してもらいたいスタジオもあります。できるだけ希望に合わせてもらえるようロイヤリティを設定します。

数土 いまアニメ業界は圧倒的にスタジオが不足していますが、そうした条件は他の企業よりもトムスさんが魅力的であると考えていいですか?

篠原―――採算度外視で大きな予算を払うプロデュース会社、プラットフォームとかもありますので金額だけでは勝てないケースもあるとは思います。けれども互いに苦労するところは分かるので、制作会社 兼 事業会社として共感いただければ。例えば作画をやってくれる場所が足らない時に、我々がつてを通じて探して「どこどこに相談してみてください」といった対応は出来ますし、それはプロデュース会社やビデオメーカーにないメリットです。
あと外部のスタジオさんと組むことは、グロス発注(*)ではありません。今までもトムスが元請けになって、その後に外部スタジオに発注することはありました。そうではなくトムスのプロデュースによるそのスタジオ制作で、元請けとして制作会社の名前をださせていただくので下請けではありません。
*製作委員会などから受注したスタジオが、制作業務をまとめて他スタジオに再発注すること。

数土 協力するスタジオやビジネスパートナーに傾向はあるのですか。

篠原―――老舗同士が組むよりは、新興のスタジオさんが多いです。作るだけの経営に限界を感じ、ビジネスにも興味があるのですが出資するまでの余裕はないといったスタジオです。トムスのビジネス部隊と一緒に成長できると考えていただくことが多いですね。

■作る側がプロジェクトの主導権を持てる体制を

数土 トムスにとってのメリットは何ですか?かなり手間がかかるビジネスではあります。

篠原―――業務の幅を広げてプロジェクトのイニシアティブを取れることです。制作会社のポジションがあまり高くないのは、日本のアニメ産業の問題だと考えています。作る側がプロジェクトの主導権を持って、作品が当たった時には最もメリットが得られる。いずれそういう場に立ちたいという強い意志があります。それを実現していくために今回のプロジェクトが有効だと思っています。

数土 アニメ産業がドラスティックに変るなかで、トムスや今回のプロジェクトに一番影響を与えていることは何ですか?

篠原―――グローバル化が進み世界的にアニメの人気や注目度があがっていることが大きいです。それにどう対応するかがここ数年間の悩みでありますし、チャレンジになっています。全世界でヒットする作品を新たに作っていく意識を持っています。『バキ』や『Dr.STONE』が世界で人気になったので、それに続く作品をどう作っていけるかが課題であり、「UNLIMITED PRODUCE」の大きなミッションです。

数土 『バキ』や『Dr.STONE』の成功要因はどこにあったのですか?

篠原―――やはり原作力が強いです。世界で受け入れられる世界観で、日本特有の文化にあまり影響されない作品です。
出版社とのアライアンスも再度強化していきたいと考えています。制作会社は出版社、テレビ局から「これやりませんか」とお声掛けをいただくことが多いですよね。ですがトムスとして作品を選んで、賭けてみたいと出版社に交渉していく営業体制を整えようとここ数年間、活動をしています。

数土 いままでビデオメーカーがあって放送局、代理店があったところで、制作会社が中心的な役割となると、「えっ、トムスさんひとりでやるのですか」みたいなことは言われませんか?

篠原―――言われはしませんが、思われているかもしれません。ただ他の大きな制作会社でも自前で営業部隊を持っているスタジオは多くありません。出版社からは10社での製作委員会よりは、「制作と営業と出版と3社でいいじゃないか」との声もでています。トムスが制作とプロデュースの両方を持てれば出版社と少数で製作委員会を組んで、フレキシブルに回していくことが可能です。それは、プロジェクトのメリットにもなります。

数土 世の中の環境の変化からも求められているわけですね。

篠原―――そう思っています。ビデオメーカー、テレビ局、スタジオ、出版、それぞれの役割分担があったのが、今やどこの会社もプロデュース会社化している状況です。ここで勝ち残っていくためには我々も変化しなければいけない。その時に新興のスタジオさんが一緒にやりましょうと協力していただけるのであればいいですね。

数土 今回のプロジェクトの目標を教えていただけますか。

篠原―――短期的にはこのプロジェクトで年3本から5本の作品をだしていきたいです。ただ企画から放送開始まで2年とか、長いものですと3、4年かかりますから、数年後からトムスのプロデュース作品を年間3本から5本、世にだしていければと思います。

数土 本日はありがとうございました。

前編:(制作スタジオの枠を超えて)

トムス・エンタテインメント
公式サイト https://www.tms-e.co.jp/

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