アニメ業界のふたつの注目プレイヤーが手を組み、新しいコンテンツ創出を目指すことになった。アニメ製作・映像ソフトの大手エイベックス・ピクチャーズは、CGスタジオのグラフィニカと共同出資してFLAGSHIP LINE 株式会社をこの7月に設立した。
資本金は5000万円で、60%をエイベックス・ピクチャーズが、40%をグラフィニカが出資する。代表取締役社長は、エイベックス・ピクチャーズでアニメビジネスの経験が長い大山良氏が就任。取締役には代表取締役社長の勝股英夫氏、メモリーテック・ホールディングスの上田豊氏、グラフィニカの伊藤暢啓氏が起用されている。新会社はエイベックス・ピクチャーズの連結子会社となり、本社も同社と同じ渋谷区南青山のビルに入る。
エイベックス・ピクチャーズは国内では、バンダイナムコアーツやアニプレックスと並ぶDVD/Blu-rayの映像ソフトの大手である。『おそ松さん』、『KING OF PRISM』、『ユーリ!!! on ICE』などのヒット作を送りだしている。
一方で近年の映像ソフトビジネスの縮小傾向から、アニメビジネスの多角化に積極的だ。音楽やライブイベント、2017年7月にはゲーム会社イクストルの買収で話題を集めた。
FLAGSHIP LINEの設立もその一環となる。周辺ビジネスでより大きな利益を生みだす企画開発が視野に入る。発表ではFLAGSHIP LINEは、アニメだけでなく、ゲームやVRでの作品の企画開発や制作を通じてコンテンツを創出するとしている。
映像ソフトのライバル企業は、アニプレックスがアニメスタジオのA-1 Picturesを保有し、バンダイナムコアーツはアクタス、キングレコードはポリゴン・ピクチュアズといった具合にアニメスタジオをグループ会社化している。KADOKAWAも先頃CGスタジオENGIを設立したばかり。パッケージメーカーがスタジオを持つケースが増えている。FLAGSHIP LINEもそうした戦略に位置付けられるが、単純なスタジオでなく企画・開発に重点を置いているのがポイントである。
また事業パートナーとしてグラフィニカを選んだのも、2018年ならではである。2009年にゴンゾのCG部門がメモリーテック・ホールディングスに譲渡されるかたちで、グラフィニカは誕生した。
もともとCGを得意として、テレビアニメ、劇場アニメのCGパートで名が知られていた。しかし、2017年には『十二大戦』で総合的なアニメスタジオに方向を転換している。さらに2017年11月に2D手描きのアニメスタジオTYOアニメーションズを買収する (ゆめ太カンパニーに社名変更)など、事業の総合化、拡大を図っている。いま最も勢いのあるCG中心のアニメスタジオだ。
今回はアニメ製作大手のエイベックス・ピクチャーズと組むことで、コンテンツ創出の機能を強化する。ただ強者同士の協業ではあるが、ふたつの会社の事業における分担がやや分かりにくい。とりわけグラフィニカには、自社グループと異なる制作拠点を社外に置くメリットが見え難い。まずは手探りで進みながら、FLAGSHIP LINEの取り組みを拡大することになりそうだ。
FLAGSHIP LINE 株式会社
東京都港区南青山三丁目1番30 号
2018年7月設立
代表取締役社長: 大山良 (エイベックス・ピクチャーズ)
取締役: 勝股英夫 (エイベックス・ピクチャーズI)
取締役: 上田豊 (メモリーテック・ホールディングス)
取締役: 伊藤暢啓 (グラフィニカ)
[株主構成]
エイベックス・ピクチャーズ 60%
グラフィニカ 40%