第51回星雲賞、メディア部門は「彼方のアストラ」、「ニンジャバットマン」「三体」も受賞

アワード/コンテスト

 日本SFファングループ連合会議が主催する第51回星雲賞の受賞作品が決定した。2020年8月22日にYouTubeの動画配信を通じた番組で各部門の受賞作品を発表、受賞者からの喜びのメッセージも伝えた。
 日本長編部門(小説)は、小川一水の『天冥の標』。長編部門で3度目、短編部門も含めると5回目の星雲賞受賞となる。短編部門は菅浩江の『不見の月』だった。こちらも短編部門2度目、長編部門を含めて4度目の受賞とお馴染みの顔触れとなった。
 話題を呼びそうなのは海外長編部門(小説)である。中国のSF作家。劉慈欣が書く『三体』が選ばれた。2019年に日本で翻訳出版された本作は、中国SFとしても海外SFとも異例のベストセラーとなっている。複数の映像化プロジェクトも進んでおり、今後も注目を浴びるに違いない。

 映像や舞台などを対象にするメディア部門は、アニメの受賞が多いことでも知られる。今回も参考作品に『彼方のアストラ』、『HELLO WORLD』、『プロメア』、『天気の子』、劇場版『新幹線変形ロボ シンカリオン 神速のALFA-X』の5作品が挙がった。
 実写、ゲームも含めた8作品の中から『彼方のアストラ』が受賞に輝いた。アニメの受賞は昨年の『SSSS.GRIDMAN』に続き3年連続となった。
 『彼方のアストラ』は2016年~17年にマンガアプリ「少年ジャンプ+」に篠原健太が連載したSFマンアガ。安藤正臣監督、Lercheのアニメーション制作で映像化した。宇宙を舞台に少年少女の冒険と成長を描く。ラストのドンデン返しも話題となった。
 コミック部門の受賞は2作品であった。『バビロンまでは何光年?』 (道満晴明)と『ニンジャバットマン』(久正人)である。『ニンジャバットマン』は話題の劇場アニメをコミカライズした野心作だ。

 星雲賞は日本SF大会に参加するSFファンが選ぶアワードとして長年愛されている。半世紀にわたる歴史と受賞作品のリストは、日本のSF史を映し出す。
 例年は夏に開催される日本SF大会の会場での発表してきた。しかし今回は新型コロナウイルス感染症拡大から第59回日本SF大会「F-CON」が2021年3月に延期、星雲賞のみ夏に発表するかたちとなった。贈賞式のみ第59回日本SF大会内で実施する予定だ。

[第51回星雲賞 受賞作]
http://www.sf-fan.gr.jp/awards/2020result.html

【日本長編部門(小説)】
・『天冥の標』 小川一水
【日本短編部門(小説)】
・『不見の月』 菅浩江
【海外長編部門(小説)】
・『三体』
劉慈欣(著)/大森望、光吉さくら、ワン・チャイ(訳)/立原透耶(監修)
【海外短編部門(小説)】
・『不気味の谷』(ハヤカワ文庫SF『ビット・プレイヤー』収録)
グレッグ・イーガン(著)/山岸真(訳)
【メディア部門】
・『彼方のアストラ』 篠原健太(原作)/安藤正臣(監督)/Lerche(アニメーション制作)
【コミック部門】
・『バビロンまでは何光年?』 道満晴明
・『ニンジャバットマン』 久正人
【アート部門】
・シライシユウコ
【ノンフィクション部門】
・『小松左京スペシャル 「神」なき時代の神話』 宮崎哲弥
【自由部門】
・「史上初のブラックホールの撮影」 EHT (Event Horizon Telescope)プロジェクト

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