米国イベント上映のFathom Events 前年比8.6%増で売上げ8千万ドル突破

映画

 最近は日本の映画館では、通常の劇場公開以外での上映プログラムが盛んだ。ライブビューイングや応援上映、爆音上映といった特別な日だけのイベントである。こうした傾向はどうやら日本だけでないようだ。
 米国の劇場経営者協会(The National Association of Theatre Owners)の公式マガジン「Boxoffice Pro」によれば、劇場イベント上映専門の配給会社Fathom Eventsが2019年に過去最高の興行収入を叩き出した。チケット売上げ枚数は前年比8.6%増の570万枚。興行収入は8000万ドル(88億円)を超えた。一年間で150タイトル、244日以上のイベントを実施した。
2019年の北米全体の映画興行収入は2018年から5.5%の減少だから、Fathom Eventsの好調ぶりが際立つ。米国でもイベント感のある上映が拡大している。

 Fathom Eventsの好調は、日本のアニメ関係者にも朗報だ。近年、日本の劇場アニメの米国公開が増えているが、このFathom Eventsの配給網を使ったイベント上映の役割が大きいからだ。中小規模の配給会社がFathom Eventsの力を借りて、短期間に全米数百都市で上映することが増えている。Fathom Eventsのサイトを確認すると2019年は24タイトルにも及んでいる。アニメのFathom Eventsのプログラムに占める割合もかなり高い。
 日本アニメにとっては短期間ではあるけれど、劇場での作品鑑賞を広くファンに提供する有難いシステムである。Fathom Eventsにとっても、コアなファンが確実に劇場に足を運ぶ日本アニメはビジネス的に助かる。

 日本アニメの上映はいくつかのパターンに分かれている。ひとつはコアな作品を短期間で上映するもので、『劇場版 幼女戦記』や『映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』、劇場版『メイドインアビス』といったものが挙げられる。もうひとつは通常公開の前に上映イベントをやることで公開を盛り上げるものだ。スマッシュヒットになった『未来のミライ』、『プロメア』などがこれにあたる。2020年1月17日公開の『天気の子』も、15日、16日にFathom Eventsによるイベント上映が用意されている。
 さらにリバイバル、旧作上映も重要だ。日本アニメに限らず古い作品のリバイバル上映の少ない米国ではFathom Eventsがその役割を果たしている。日本アニメでは2019年に『風の谷のナウシカ』、『千年女優』、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』などがあった。『モブサイコ100』のような、シリーズ作品のリリース前のプレミア鑑賞もあった。
 上映期間や上映館数に柔軟性があるだけに、Fathom Eventsは今後も日本アニメの劇場上映で積極的に活用されそうだ。

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