アニメ製作大手のIGポートは、2020年7月10日に20年5月期の通期連結決算を発表した。IGポートは、プロダクション I.Gやウィットスタジオ、シグナルMDといったアニメーション制作会社やマッグガーデンなどのマンガ出版社を統括している。今期からジーベックが、連結決算より外れている。
期間中の連結売上高は94億4600万円で前年比で6.5%の増加、また営業利益は3億5100万円、経常利益は2億9100万円と前期の約3億円の赤字から黒字転換した。映像制作事業が黒字に転じたほか、版権事業の売上高と営業利益の伸びが貢献した。一方で当期純利益は2000万円にとどまった。戦略作品の映像マスターの減価償却費の一部、受注損失引当金などが損金として認められなかったことで、税負担が増したためだ。
堅調な業績を残したが、売上高は業績予想値の108億3900万円から12%程度下回っている。IGポートによれば、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために映像制作を中断したことなどで、複数作品の納品が、今期から来期に延期となったためである。
利益面は営業利益は当初予想の2億2100万円から3億5100万円、経常利益が2億2000万円から2億9100万円に上振れしている。こちらは利益率が高い版権事業が好調だったためである。版権事業の中心は、『攻殻機動隊』、『進撃の巨人』、『銀河英雄伝説 Die Neue These』、『PSYCHO-PASS』、『B: The Beginning』である。
事業別では映像制作事業が、売上高が58億8200万円(0.7%減)、営業利益が1億1900万円(前期は5億3800万円の営業損失)。主要作品は劇場版『PSYCHO-PASS 3 FIRST INSPECTOR』、『サイダーのように言葉が湧き上がる』、『キミだけにモテたいんだ。』、『攻殻機動隊 SAC_2045』、『ヴィンランド・サガ』、『歌舞伎町シャーロック』などである。
映像制作予算策定による受注額交渉を進めることで一部作品の制作収支は改善し、黒字化につながった。しかし前期からの映像制作では収益悪化が続いている。CG制作費や外注費の高騰、さらに新型コロナウイルス感染症拡大による制作期間の長期化も影響した。このため一部作品では受注損失引当金を計上した。
版権事業の売上高は17億4600万円(20.3%増)、営業利益は2億5800万円(35.9%増)。大型作品の減価償却を開始したことも影響した。
出版事業の売上高は、15億8100万円(24.8%増)、営業利益は1億2800万円(2.7%減)だった。マンガ雑誌「月刊コミックガーデン」、書籍では『魔法使いの嫁』、『リィンカーネーションの花弁』、『転生貴族の異世界冒険録』が主力。また電子書籍売上げが44%増と好調だった。
21年5月期の連結業績予想は95億8900万円(1.5%増)と、ほぼ20年5月期並みとする。一方で経常利益は1億7000万円(51.6%減)、経常利益1億8600万円(35.9%減)、当期純利益8500万円と慎重な見通しにしている。