日本アーティストの活躍の場がアジア各都市で広がりそうだ。音楽会社のソニー・ミュージックエンタテインメントは、ライブホール「Zepp」のアジア展開を明らかにした。ライブホール運営の子会社Zeppホールネットワークがアジア各都市でZepp運営事業を手がける。すでに発表されているシンガポールのほか、台湾、マレーシアでのオープンを予定する。
またアジア事業の資金として、官民投資ファンド会社クールジャパン機構(株式会社海外需要開拓支援機構)がZeppホールネットワークに出資する。出資金額は最大50億円、調達した資金はライブホールの開設と運営資金に充てられる。
開設が決まっているのはシンガポール、マレーシア・クアラルンプール、台湾・台北は、いずれもアジアの中では所得水準が高く、日本カルチャーの浸透が進んでいる。国内音楽アーティストに対するニーズが期待できる。
シンガポールでは、現地企業のBig Box Investmentと合弁会社Zepp @ Big Box Pte.Ltd.を設立。ジュロン・イースト地区の複合商業施設BIG BOXの展示場を「Zepp@BIGBOX Singapore」としてライブホールにする。ホールの面積は3500㎡、最大収容人数は2,333名だが、隣接するMEGA BOX Event Hall Bと併せると約4000名の収容が可能になる。
2017年6月4日のオープニングは、劇場アニメ『君の名は。』の音楽でもお馴染みのRADWIMPSのライブを予定。大きな話題になりそうだ。
マレーシアと台湾は、もう少し先になる。マレーシアは2020年年末を目標に市内の繁華街ブキッ・ビンタン シティセンターにも近い再開発地区の複合施設に入居予定だ。ホール面積約6,800㎡、約2,500名の収容する計画である。
台北のオープンも2020年を目途とする。新たな都市開発を目指す新北市新荘副都心内のショッピングセンター内を予定している。こちらも約2200名を収容、ホール面積約4,900㎡の大型施設となる。
Zeppホールネットワークは、1997年にソニー・ミュージックのライブ事業会社として設立された。国内主要都市にZeppブランドのホールを展開、音楽業界のライブイベントの活況に合わせて成長してきた。現在は、東京、大阪、名古屋、札幌の4都市6ヶ所にホールを持つ。また2018年には福岡、2020年には横浜にもオープン予定と積極的だ。各ホールでは、アニソンアーティストのライブ、アニメの音楽イベントも多く行われている。
そうしたビジネスをさらに海外に広げることになる。アジアの主要都市ではライブのニーズが拡大しているが、それに対応する収容規模の会場が不足している。また日本からの機材持ち込みなどにコストがかかっていた。Zeppを活用することで、ライブ公演のコスト削減が可能になる。
アジア地域では日本のアニソンのアーティストの人気が高いため、アニソンは海外でも大きなテーマになるだろう。また、これまでは難しかった人気アーティストの日本と同じ仕様での日本を含むアジアツアーといったものも可能になるだろう。
出資するクールジャパン機構は、日本のクリエイティブ産業の海外展開支援を掲げて2013年に設立された。政府と日本を代表する企業が共同出資する。これまでに海外に建設する商業施設、物流拠点、飲食店、放送チャンネルのほか、コンテンツ関連の企業にも多く投資してきた。この中にはTOKYO OTAKU MODEやコンテンツローカライズのSDI Mediaグループ、さらに先日国内事業者に売却された海外向け日本アニメ配信のDAISUKIも含まれている。
Zeppホールネットワークは海外展開で、日本の音楽産業の海外市場開拓、海外でのライブビジネスによる収益拡大を目指す。海外向けのライブホールのネットワーク構築を日本企業が手がけることはこれまでにない。日本カルチャーの海外波及効果が高いことから、出資案件になったとみられる。