「アニメーターの仕事がわかる本」。最近僕の周りで「読んだ!」と言われる比率が圧倒的に高い本です。今年1月に上梓されました。
「興味はあるけれど時間はとれなくて」と思ってるかた、そして今ここで知ったというかた。とにかくまず読んでとお薦めしたいです。
本書ではベテランアニメーターの西位輝実さんが“にしー先生”となり、アニメーターを目指す“もちぃ”にアニメーターの仕事や環境、そして業界をサバイバルする方法を教えるかたちをとっています。タイトルも「アニメーターの仕事がわかる」ですから、アニメーターを目指す人や若手アニメーターのための本だと思うかもしれません。
もちろんそうした目的で書かれていますが、それだけでない魅力があります。むしろアニメに関係する全ての人に読んで欲しいと思えます。
アニメの仕事はアニメーション制作に加えて、企画や流通、プロモーション、グッズ開発ほか非常に細かに職種が分かれています。そして実は互いの仕事をあまりよく知っているわけでありません。最も人数が多く、制作現場を支えるアニメーターの仕事でも意外に知られてないのでないでしょうか。
昨今メディアではアニメーターが大変と言及されることが増えてます。ただ一体何が課題なのかをきちんと把握している人はあまりいないでしょう。アニメーターの現場でいま何が起きているのか、人材不足が叫ばれるが何が問題なのかが、本書では平易に説明されています。
本書では指摘が多いアニメーターの就業環境の問題にも触れています。ただ厳しい環境だけでなく、いかにサバイバルして、収入をあげていくかの方法にも言及し、決して悲観ばかりでありません。
逆にアニメーターに対する手厳しい意見も随所にあります。たとえば本来はアニメーターとしての実力が充分でないにも関わらず、人手不足であるがゆえに業界に留まってしまうケースもあるのではないかといった指摘です。こうした話は外部からは語りにくく、長年現場で活躍してきたからこその重みがあります。
制作費不足の問題、現場の就業環境(改善が進んできたとはいえ)も含めて、いろんな人の耳に痛い話題も少なくありません。世の中は手厳しい言葉を素直に聞く人ばかりではありません。何も言わずに黙って自分の仕事だけをしているほうがきっと楽なはずです。
そんなリスクを顧みずに発言するのは、著者がやはりアニメが好きで、アニメーターという仕事を大切に思っているからでないでしょうか。それがこの一冊が信頼が出来て、価値があると感じさせる理由でしょう。
『アニメーターの仕事がわかる本』
西位輝実(著)、餅井アンナ(著)、死後くん(イラスト)
A5判 208ページ
定価:本体1600円+税
http://www.genkosha.co.jp/gmook/?p=20833