12月になり、北米ではいよいよ2019年の賞レースが始まった。なかでも注目の高いふたつの映画批評家協会が相次いでアワードリストを発表した。ニューヨーク映画批評家協会とロサンゼルス映画批評家協会である。
両協会が今年は最優秀アニメーション映画賞で同じ作品を選んだ。フランスのジェレミー・クラパン監督の『失くした体』だ。『失くした体』は事故で切断されてしまった片手が、自らの本体を求めてパリの街を彷徨う異色のストーリー。そのなかで手の持主の過去と現在が交錯する凝った作品になっている。
北米には映画批評家協会が数多く存在するが、会員数、そして米国のエンタテイメント・カルチャーの中心であることから最も注目されるのがニューヨークとロサンゼルスのふたつである。
似たような出自ではあるが、ふたつの協会の最優秀アニメーション賞は、受賞作品が一致することはあまりない。2010年以降は2012年の『フランケン・ウィニー』と2018年の『スパイダーマン:スパイダーバース』のみ。今年は昨年に引き続きの同じ作品の受賞になった。
『スパイダーマン:スパイダーバース』が、その後アカデミー賞の最優秀長編アニメーション賞を受賞したことを考えれば、その最有力候補に躍り出たと言っていいだろう。
もうひとつ注目されるのは、本作の北米配給は映像プラットフォームの大手Netflixが担当していることだろう。2019年の公開映画の資格を得るため北米でも劇場上映はされている。しかしその規模は、ハリウッドの大作映画から見れば極めて限定されている。一般の鑑賞の多くは自宅のテレビでされている可能性が強い。
2018年にNetflix映画として配給され、アカデミー賞3部門に輝いた『ローマ』のような現象がアニメーションでも起きている。アニメーション映画のカルチャーシーンの変化としても注目される動きだ。
日本から受賞が期待されていた新海誠監督の『天気の子』は、いずれのアワードにも届かなかった。先週は他にもいくつかの地区の映画批評家協会でも、今年の映画賞やノミネートを発表しているが作品の名前は挙がっていない。
『天気の子』の北米公開が年明け1月17日からとなるため、専門家であっても本作を観る機会は限定されていることも影響していそうだ。12月9日には、ゴールデングローブ賞のノミネートが発表される。ここが次の重要ポイントになる。