2019年12月10日、映像制作・ライセンス事業の円谷プロダクションと親会社フィールズは、「ウルトラマン」シリーズの海外利用権に関する米国裁判で勝訴を得たと発表した。裁判は日本国外での「ウルトラマン」シリーズの権利を持つと主張するユーエム株式会社が提起したもので、2015年から続いていた。
ユーエムは裁判で「ウルトラマン」シリーズの権利保有者であることの確認と、円谷プロダクションへ損害賠償の支払いを求めていた。これに対して合衆国第9巡回区控訴裁判所は、ユーエムが主張する1976 年の契約書は有効でないとし、円谷プロダクションが日本国外における一切の権利を有するとした2018年5月の地方裁判所での一審判決を支持した。
「ウルトラマン」の権利を巡る問題は、発端は1990年代半ばに遡る。三代目社長であった円谷皐氏が1995年になくなった後、タイのチャイヨー・プロダクションが1976年に円谷プロダクションから「ウルトラマン」シリーズ7作品の日本を除く世界での利用権譲渡を受けたと主張するようになった。
円谷プロダクション側がこれを否定し、契約の有効性を求めて、日本、タイ、さらに米国、中国などで長年、裁判が続けられてきた。このうちタイでの裁判では円谷プロダクション側が勝訴、日本の裁判ではチャイヨー側が勝訴、また中国での裁判では判断が揺れ動くなど複雑な様相を見せていた。
2008年には、今回訴訟を起こしたユーエムが、チャイヨーから同社が主張する「ウルトラマン」シリーズの海外利用権の譲渡を受けた。これにより裁判の相手側もチャイヨーからユーエムに移っている。
米国での裁判は、1976年当時の代表者・円谷皐が署名した契約書が真正かを問うものとなった。今回の裁判ではこれを偽物と判断した。
判決を下した控訴裁判所は、日本での高等裁判所に該当する。今回の裁判所の判断で、円谷プロダクションによる米国での「ウルトラマン」シリーズ商業展開の障害は著しく低くなった。ユーエムはさらに最高裁判所に控訴できるが、円谷プロダクションは最高裁判所が上告を受理するケースは極めて低いとしている。