エンタテイメント大手KADOKAWAの業績が急回復している。2019年11月24日に発表された第2四半期決算で、営業利益が前年同期の2倍、当期純利益ではおよそ3倍に達した。
連結売上高は1004億3900万円の1.7%減にとどまったが、利益の伸びが大きかった。営業利益は63億8900万円(123.1%増)、経常利益は68億500万円(72.9%増)、当期純利益は62億200万円。利益の増加は出版事業、映像・ゲーム事業が堅調だったほか、ウェブサービス事業が黒字転換したことが大きかった。
セグメントごとでは、出版事業が売上げで全体の過半を占めた。売上高は562億400万円(2.0%増)、営業利益で33億800万円(10.1%増)である。電子書籍・電子雑誌が好調で、デジタル化の潮流を活かした。ヒット作はマンガ単行本で『ダンジョン飯』、小説では『魔法科高校の劣等生』の最新刊で、「Fate」シリーズ、「文豪ストレイドッグス」シリーズ、『天気の子』も好調だった。「角川まんが学習」と「角川まんが科学」の両シリーズも好調だとしている。
アニメ関連ビジネスが含まれるのは、映像・ゲーム事業である。アニメでは『オーバーロード3』『盾の勇者の成り上がり、』『異世界チート魔術師』が北米と中国向け権利許諾で牽引した。オンラインゲームとのコラボレーションによる権利許諾も収益に貢献した。
ゲームのヒット作は『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』で、国内だけでなく海外でも人気となった。映像・ゲーム事業の売上高は236億2000万円(0.8%減)だったが、営業利益36億4800万円(44.1%増)と、利益面の貢献が大きかった。
直近まで会社全体の業績を引っ張ったウェブサービス事業は急回復している。売上高は131億5900万円(4.8%減)にとどまったが、営業利益は15億9100万円と前年同期の1億円の損失から急浮上した。ドワンゴの事業構造改革推進によるコスト削減が効果を発揮した。
動画配信のプレミアム会員は四半期で4万人減の171万人と引き続き減少したが、ニコニコチャンネル有料会員数が同時期に7万人増えて108万人となった。イベントでは「ニコニコ超会議2019」ではコストを下げつつ、過去最高の動員を実現した。アニソンライブ「Animelo Summer Live 2019」は3日間で8万4000人を動員した。
業績の利益回復が進んだことから、今後は積極的な経営が期待される。なかでも急成長を続ける電子書籍のプラットフォーム事業、アニメ事業、国内外のライツ事業は鍵になりそうだ。
KADOKAWAは中期経営戦略で1)IPをアニメとゲームでグローバルに広く届ける、2)IPの世界観を原作・イベント・グッズ・ウェブで深く味わってもらう を掲げる。書籍・映像・マンガなど長年築き上げた作品をデジタル、海外、ライセンス展開で活用していくことになる。
さらに来期以降は、2020年7月の所沢キャンパスの完成で出版流通の効率化、クリエイティブ創出も目指す。2019年から20年にかけてグループの大型施設開業が相次ぎ、KADOKAWAの経営は今後大きく変わりそうだ。
通期予想でも売上高は2070億円(0.8%減)と横ばいとしている。しかしゲーム事業の一部など、期間中に複数の事業売却を実施していることから、既存事業では実質増収を見通していることになる。
営業利益は100億円(269.3%増)、経常利益は108億円(156.8%増)と利益面では下期も引き続き堅調な見込みだ。最終損益は95億円と黒字転換を見通す。