ソニーグループが、世界の日本アニメビジネスで一挙に攻勢にでる。2019年9月24日、世界の流れを一変させそうな大きな発表を行った。ソニー・ピクチャーズテレビジョン(SPT)とアニプレックスは、両社傘下の日本アニメ配給・配信事業の3つの会社の事業を統合する。
SPT傘下の米国アニメ事業会社のファニメーション(Funimation)、アニプレックス傘下のフランスのアニメ配信事業会社ワカニム(Wakanim)、そしてオーストラリアのアニメ会社マッドマン・アニメ・グループ(Madman Anime Group)を統合する。SPTとアニプレックスはジョイントベンチャーを設立し、3社の拠点を共同保有する。全体の事業はファニメーションのゼネラルマネージャーであるコリン・デッカー氏が統括する。
ファニメーションは、米国最大の日本アニメ事業会社。『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』、『進撃の巨人』、『僕のヒーローアカデミア』など人気アニメの北米ライセンスを保有する。1994年設立の老舗だが、2017年にSPTに買収されソニーグループとなった。
またマッドマンはオーストラリアを拠点にする日本アニメ事業会社で地域最大の規模を誇る。アニメの配給・配信のほかアニメイベントの運営にも定評がある。2017年暮れにアニプレックスの傘下になった。ワカニムはフランスの新興アニメ会社で配信を主事業とするが2015年からアニプレックスが資本参加してきた。
さらにファニメーションは、今年5月には英国最大の日本アニメ配給会社マンガ・エンタテインメント(Manga Entertainment)も買収している。北米、ヨーロッパ、オセアニアの主要市場をカバーする巨大なアニメ配給・配信ビジネスが誕生することになる。
事業統合により、ファニメーションがまずアニメ作品のグローバルライセンスを獲得する。そのうえで各プラットフォームにてそれぞれの地域で配信をする。また配信だけでなく、劇場配給、パッケージ、商品化、イベントなど全方位でアニメをファンに届けるビジネス展開を目指すとしている。
2010年代に配信普及をエンジンに、日本アニメの知名度が広がった。この結果人気タイトルのライセンスは獲得競争が世界いずれの地域でも激しくなっている。さらに世界最大の映像配信プラットフォームNetflixが登場、日本アニメの世界配信大手クランチロールがワーナーメディア グループになるなど、ビジネスプレイヤーの大型化も進んでいる。
事業統合で各社がまとまることで、交渉を有利にする狙いもありそうだ。また勢力を拡大するライバル会社に対抗する。
アニプレックス自身は日本のアニメビジネスで大きな存在感を持っている。さらにアジア地域の展開も熱心だ。SPTは日本、東南アジア、台湾、インドで日本アニメを中心としたアニメ専門チャンネルのアニマックスを運営している。
両社が手を組み、さらに新しい事業統合が加わることで、世界の主要マーケットがカバーされる。グローバルな巨大アニメ事業グループが誕生する。
これまでは同じソニーグループの中でもソニー・ピクチャーズ系のSPTとソニーミュージックグループのアニプレックスは距離があるとみられてきた。それだけにユニットを超えて手を組んだのは大きなサプライズだ。それはソニーがグループとして、アニメの海外ビジネスに相当の力を入れているとみていいだろう。
事業の第一弾は、10月にスタートする話題のテレビアニメシリーズ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』になる。ファニメーション「FunimationNow」、ワカニム「Wakanim.TV」、マッドマン「AnimeLab」の各配信プラットフォームが、本作を先行独占配信する。アニプレックス製作の大型作品でまず勝負をかける。