2018年の米国コミック市場が堅調だったようだ。米国のコミックビジネス情報のComichronとポップカルチャー情報のICv2の共同調査から明らかになった。
2019年5月2日、両社は毎年恒例の北米コミックマーケットの市場規模の2018年版を発表した。これによればコミックとグラフィックノベルを合算した2018年の市場は、10億9500万ドル(約1200億円)になる。5%減となった2017年から大きく切り返えした前年比7.8%増だ。
これは2016年の10億8500万ドルを上回り、過去最高である。特に前年比で40%増となったキッズ向けグラフィックノベルの成長が市場を牽引した。
アメリカのコミック市場は、「floppies」と呼ばれる雑誌形式のコミックと、日本の単行本に相当するグラフィックノベルのふたつの出版形式に大別される。装丁だけでなく、刊行される作品や流通、ビジネスモデルも大きく異なっている。
グラフィックノベルの売上高は6億3500万ドル(11.1%増)、コミックの売上は3億6000万ドル(1.4%増)。グラフィックノベルが全体の58%、コミックが33%だ。
日本マンガのほとんどはグラフィックノベルで刊行されている。2018年に大きく売上げを伸ばしたキッズ向けの大半もグラフィックノベルになる。
近年はグラフィックノベルのほうが高い成長を続けている。このため2000年代初めにはコミック売上げがグラフィックノベルを上回っていたが2000年代後半に逆転し、その差はどんどん開いている。2018年にはグラフィックノベルの売上は、コミックの1.7倍を超えるほどだ。
これに比例して流通チャンネルでも、コミックが強いコミック専門店の売上げが減少し、グラフィックノベルが強い一般書店流通の比率が伸びている。それでも2018年ではコミック専門店の売上が5億1000万ドルと一般書店の4億6500万ドルを上回り、無視できない存在だ。
新しい流通として注目されるデジタルコミック市場の売上は1億ドル(約110億円)と推定されている。2017年は9000万ドルと前年比減のサプライズとなったが、こちらも再び成長軌道を取り戻した。しかし市場全体に対する割合は1割以下で、存在感は必ずしも大きくない。これは日本や中国をはじめとする東アジアの国とは対照的だ。
ComichronとICv2の市場規模算出は、複雑な北米のコミック/グラフィックノベル市場を様々な角度から検証して得られたものだ。
コミック流通の大半を占めるダイヤモンド・ディトリビューションのデータに、グラフィックノベルの大半が流通する書籍市場のデータを算出するNPDブックスキャンの数字を合算する。さらに独自の流通を形成するデジタル市場を各社の聞き取り調査により推計した。
また2018年から街中の売店(ニューススタンド)、そして小規模ながら勢いを増すクラウドファンディングを「Other」として別カテゴリーに分類した。「Other」は2000万ドル(約22億円)だが、売店とクラウドファンディングでおよそ半分ずつとしている。ここから北米のコミック分野のクラウドファンディング市場は10億円超あることが分かる。