7月9日、東宝は本年上半期(2021年1月~6月)の自社映画興行部門収入と自社映画営業部門の興行収入を発表した。いずれも前年比では大きく伸びたが、一昨年(2019年)比では依然大きな落ち込みである。新型コロナ感染症に対応した営業縮小などが続いていることが影響しているとみていいだろう。
映画興行部門収入は、TOHOシネマズなどの東宝系列の劇場で上映された作品の興行収入総合計になる。東宝配給以外の作品も含むから、国内映画興行全体の動向を推測することが可能だ。
上半期の累積興行収入は210億2200万円。前年比で46%増と大きな伸びとなった。しかし前年は新型コロナ感染症対応で、休業や営業縮小があったためその反動が大きい。実際に2019年比では依然44%減と平常時までの回復への道のりの遠さを感じさせる。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『名探偵コナン 緋色の弾丸』『キャラクター』といった自社配給作品以外に、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』といった他社配給作品があった。また大型作品が少ないこともあり、洋画での大ヒットが少なくなっているのも特徴だ。
映画営業部門は東宝が配給する作品の興行収入の合計だ。こちらは他社映画館での興行も含まれる。上半期の累計は356億4600万円と、前年比で4.25倍にもなった。こちらも新型コロナの反動が大きく2019年比で13%減になる。
営業部門より好調が際立つのは、『名探偵コナン 緋色の弾丸』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の2本の大ヒットの影響とみられる。
昨年と比べて回復基調ともみられる数字だが、実際に映画興行を取り巻く環境は引き続き厳しい。新型コロナ感染症の拡大が収まる気配がないからだ。実際に5月、6月は東京地区の緊急事態宣言もあり、再び数字が落ち込んでいる。さらに7月から8月にかけての緊急事態宣言延長は、集客シーズンの夏休み、お盆に重なるだけにその影響が懸念される。