2019年4月23日、米国の映画芸術科学アカデミーは理事会を開催し、2019年の作品を対象とする第92回米国アカデミー賞の選考ルールの改正案を協議した。これを受けて新たな方針を決定した。
前年から大きな変更があったのは長編アニメーション賞で、選考方法が一部変更される。また外国語映画賞(Foreign Language Film)が、名称を国際映画賞(International Feature Film)に変更することになった。
長編アニメーション賞では、これまであった「選考対象資格を持つ作品が8本を下回った年はアワードを設けない」としていた規定を今回から廃止する。
長編アニメーション賞は2001年に設立され、米国アカデミー賞のなかでも比較的歴史の浅いアワードだ。もともと長編アニメーションの劇場公開本数が少ない時代に誕生したことから、設けられたルールだ。
しかし実際にこの規定が適用された年はこれまでになく、有名無実化していた。さらに近年は劇場アニメーション製作が増えており、毎年20本以上がアカデミー賞にエントリーする。ルールを実態に合わせた。
もうひとつの変更は、ノミネート選出に関わるものとなる。ノミネート作品決定のための投票権を短編アニメーションと長編アニメーションの各支部に属するアカデミー会員に自動的に与える。両支部以外に属するアカデミー会員は事前に投票参加の意思表示が必要となる。
これまではノミネート作品は長編アニメーション選考委員会内の投票で決めていた。選考委員会は全アカデミー会員に案内がだされるが、それに申し込んだ者のみが参加していた。
最優秀賞の最終投票の方法は前回と変わらない。所属部門に関係なく全アカデミー会員が投票する。
今回の変更ポイントは、アニメーション関係の会員であれば自動的に登録されることからノミネート投票がより簡単になる。一方でアニメーション以外の会員には、手間がかかるままになっている。
アワードに熱心な関係者だけでなく、アニメーション業界のより幅広い意見が反映される可能性が高そうだ。投票者の範囲が広がることで、最終投票に続き、より広く名前の知られた作品が有利になる可能性がある。
しかし一方でアカデミーは近年、海外在住の会員やマイノリティー会員を意識的に増やしている。今回の選考ルール改正がどう影響するかは、ふたを開けてみなければわからなそうだ。
短編アニメーション部門でも、一部ルールの改正があった。こちらはエントリー条件の変更となる。エントリー資格のひとつであったロサンゼルス地区での商業公開が、ロサンゼル地区もしくはニューヨーク地区のいずれかに変更された。
外国語映画賞から国際映画賞の名称変更は、タイトルが時代に合わないとの理由だ。ただし選考ルールについてはこれまでと同じで変更はない。
また配信オリジナル映画をターゲットに、スティーブン・スピルバーグ氏らが立案を目指していた新たな選考資格の討議は退けられた。この案は期間が短く、公開劇場数の少ない作品をエントリーから排除することを求めていた。Netflixなどの配信会社が、小規模劇場公開をしたうえで、期間を置かずに全世界配信をすることが背景にあった。そうした作品を除外する狙いだ。
しかし本来の目的とは別に、この改正案が採用されれば、全国公開でなく、規模の小さな限定公開が大半の日本アニメにも大きな影響が予想された。今回はそれが回避された。
長編映画については、これまで同様にロサンゼル地区の商業劇場で最低1週間以上、かつ1日3回以上の有料上映を最低条件とする。劇場公開初日までは映画館上映以外の方法でリリースしてはいけないが、公開後はこれが可能になる。