映画興行で国内ではライバル企業になる2社が海外進出で手を組む、そんな驚きのプロジェクトがこのほど明らかになった。映画会社の松竹と映画興行チェーンの東急レクリエーションが、共同でベトナムの映画興行会社の株式を取得した。2019年3月27日に両社から発表された。
松竹と東急レクリエーションは、まずシンガポールに合弁会社を設立。合弁会社を通じてベトナムのシネマコンプレックス事業会社の株式の約28%を今年1月に取得した。
BHD Mediaはベトナムのシネコン事業の有力会社のひとつで、ホーチミン、ハノイといった大都市に9サイトを運営する。同国の映画配給・興行でトップ5の一角を占める。
一方日本側の松竹は映画や演劇で知られたエンタテインメント企業の老舗である。グループ会社に松竹マルチプレックスシアターズがあり、新宿ピカデリーをはじめ30サイト297 スクリーンを抱える。東急レクリエーションも、「109シネマズ」のブランドで19サイト175 スクリーンを展開する。いずれも最新設備を導入した体感型鑑賞や、ライブビューイングなどの新しいかたちの劇場エンタテインメントに積極的だ。
ベトナムでは映画興行市場が急成長しており、2012年に50億円規模であったが、2018年には約200億円に達したとみられている。一方で、映画配給・興行では韓国系のCJと、地場のGalaxyの2社が大きなシェアを握っている。運営のノウハウと資本を手にしたい現地企業と、映画興行での海外事業という新分野に進出したい日本の2社との利害が一致したといえる。
これまで国内事業に大きく依存してきた映画業界だが、近年、アジア各国や北米で、日本映画が公開するケースが増えている。中国で『君の名は。』、米国では『ドラゴンボール超 ブロリー』が大きなヒットになった。
アニメを中心に日本の映画は人気はあるが、配給、興行のネットワークが充分でなく、まだまだ上映の機会は少ない。松竹と東急レクリエーションの今回の試みは、そうした状況に風穴空けるものになるかもしれない。日本コンテツの海外進出の新たなかたちとしても注目される。