2019年3月14日(現地時間)、アヌシー国際アニメーション映画祭は、2019年の短編部門のオフィシャルセレクションを発表した。短編部門40作品、Off-Limits部門8作品、Perspectives部門23作品、Young Audiences部門9作品である。
このうち注目の高い短編部門には、日本から水江未来監督の『The Dawn of Ape』が選ばれた。また林俊作監督の『Leaking Life』がOff-Limits部門に選出されている。両作品は6月中旬にフランス・アヌシーで開催される映画祭で上映され、最終日15日に発表される各アワードを競うことになる。
アヌシー国際アニメーション映画祭は1960年にスタートした世界で最も歴史が長く、規模の大きなアニメーション映画祭。2019年は短編部門だけで3000本を超えるエントリーがあった。オフィシャル選出は高いハードルで、それだけに価値は高い。
短編部門はかつては選考対象になるオフィシャルコンペティション部門と、対象外のアウト・オブ・コンペテイション部門から構成されていた。しかし現在はアウト・オブ・コンペテイションに替わりいくつかのテーマに沿った「Off-Limits」「Perspectives」「Young Audiences」を設けている。本選漏れと印象が強かったアウト・オブ・コンペテイションでなく、短編コンペとは異なる視点を与えることで、観るべき作品としている。
水江未来監督は1981年生まれ。これまでにもアヌシーやオタワ、広島といったアニメーション映画祭でのコンペティションを重ねている。受賞経験も数多い。
色と音楽が連動し、複雑に変化して動き続ける抽象的な2D短編アニメーションを得意としてきた。現在は初の長編『水江西遊記』(仮)を制作中。今回選出された『The Dawn of Ape』は長さ4分、2DのCGアニメーションとしている。新たな挑戦を続ける水江氏の新作として注目される。
林俊作監督は2017年に『Interstitial』で米国スラムダンス映画祭でアニメーション短編部門の審査員賞を受賞し注目を集めた。こちらは手描きのドローイングを中心に様々手法を重ね合わせた14分半の作品になる。
フランス、ヨーロッパだけの映画祭だけでなく、世界のアニメーション映画祭を目指すアヌシーだが、短編映画に限ればオフィシャルセレクションは依然、ヨーロッパ優勢だ。北中南米やアジアからの選出は相対的に少ない。そのなかでは東ヨーロッパの作品が伸びていること、東アジアの活躍が目立つ。
東アジアからは中国が短編部門2本を含む6本、韓国は短編部門2本を含む3本と日本を上回る。本年の映画祭は日本特集で日本アニメーションの歴史を振り返るが、現在の短編アニメーションのクオリティアップも、今後課題になりそうだ。
今後は3月末までにテレビシリーズ部門、受託部門、学生部門が発表される。また長編映画は4月末までに発表される。最終的な受賞者は映画祭の最終日6月15日に明らかにされる。
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