2018年10月からNHK EテレでTVアニメシリーズ『ラディアン』の放送がスタートする。フランスでトニー・ヴァレント描く原作を、日本のアニメスタッフが映像化する話題作だ。
放送開始まで一ヶ月を切る中で、原作者のトニー・ヴァレント、岸誠二監督、そして主人公セト役の声優・花守ゆみりらが会見で、作品への思いを語った。
『ラディアン』は空から怪物・ネメシスがやってくる世界が舞台。主人公の少年セトは、ネメシスを倒すため大魔法使いを目指す。やがてネメシス根絶のため、その巣がある伝説の地“ラディアン”を目指すことになる。
主人公・セトを演じるのが、花守ゆみり。これまでは少女役が多かったという花守は、当初「男の子らしさと何だろう」と考えたという。しかし途中から「男の子らしさではなく、セトらしさ」を考えることに気づき、声の高さではない部分に気を配った。そして今回の明るく真っ直ぐな主人公の役作りをした。「愛される主人公になったら」と話す。
ファンタジックな世界に少年の成長とオーソドックスな冒険物語だが、本作の最大の特徴は原作がフランス人のトニー・ヴァレントであることだろう。日本のマンガが大好きなトニーがその影響を受けるなかで生みだした『ラディアン』は、一見すると日本の少年マンガのようだ。
アニメ化決定を「いまだに夢みたい」とするトニーは、日本マンガのスタイルを選んだことについて「フランスには様々な文化が存在しているが、自身はバンドデシネ(フランスのマンガ)より日本マンガにより多く親しんだため」と説明する。そして日本マンガのよいところは長い物語があり、作品の展開と共に成長できることだという。
もちろんトニー・ヴァレントならの表現は大きい。差別や人種問題といった部分は、移民が多く、様々な文化がより多く交差するフランスの社会を反映する。フランスのカルチャーを背負ったトニーならだ。
ただトニーによれば、この選択は意図的ではない。自身でそうした特徴に気づいたのは2巻目を描いている頃。明確な理由は分からないけれど、自身の父親がフランス人でなかったことなどが、無意識に影響したのではないかと話す。
岸監督もこれを日本にはない世界観とするが、「それを押し出し過ぎてはいけない」とも。そうしたことが裏に隠れている、大人が観ても楽しめる作品を目指すというわけだ。
原作がフランスにあることが話題になりがちな本作だが、作品の評価の高さが大前提。NHKの制作統括の米村裕子は「日本のマンガと同じような感覚で選んだ」と、優れた作品であることがアニメ化決定の理由と説明する。
そうであれば『ラディアン』は、日本だけでなく、海外でも注目されないわけがない。アニメのグローバル化時代を代表する世界に羽ばたく作品になるはずだ。