
豊永真美
フランス国立映画センター(CNC)では17年連続で、毎年「フランスのアニメ市場」 ¹ と題するレポートを発表している。レポートでは、フランスの劇場用映画、テレビアニメ、配信アニメの動向のほか、アニメに対する補助金や労働市場、労働者に占める女性比率などをまとめている。本稿では劇場用アニメの動向を紹介する。
■劇場用アニメの基本は子ども向け映画
2024年にフランスで新たに劇場公開されたアニメ映画は60本。2023年より1本増え、統計を取り始めた1996年以来過去最高を記録した。うち、日本アニメは1996年の3本から、2023年は13本、2024年は18本に増加した。
ただし、興行成績の上位を占めたのはアメリカ映画である(表1)。2023年には『君たちはどう生きるか』が155万人を動員し、第7位となった。2024年は宮崎駿や新海誠など大規模興行がされた作品がなく、上位10作品には入っていない。
■「神様の貨物」が50歳以上を惹きつける
米国アニメが主流の中で、2024年はフランスも出資するラトビア発の「Flow」(2025年アカデミー長編アニメ賞)と「神様の貨物」がそれぞれ観客動員数50万人以上と中規模のヒットを記録した。中でも、実写映画「アーティスト」でアカデミー賞監督賞を受賞したミシェル・アザナヴィシウスが監督した「神様の貨物」は観客の6割が50歳以上となっていることが注目される。
フランスではアニメ映画は基本子ども向けであり、2024年でも、約4割が14歳以下となっており、50歳以上の割合は8.7%に過ぎない。比較的高齢の観客が多いとされた『君たちはどう生きるか』でも50歳以上の割合は2割弱である。
「神様の貨物」は、ナチスのホロコーストを想起させる物語で、ナレーターを本作が遺作となったベテラン俳優のジャン=ルイ・トラティニャンが務めるなど高齢者を引き付ける題材であった。それにしても、観客の6割が50歳以上というのは、かなり特異であり、フランスで新たなアニメ映画の観客層を開拓した模様である。今後フランスで、50歳以上の高齢の観客が増えるのか注目される。
●ひと口メモ
・2024年のフランスの劇場用映画の観客数は延べで1.8億人。日本の1.4億人に比べてやや多い。フランスの人口は日本の約半分。
¹ CNC ”Le marché de l’animation en 2024“ https://www.cnc.fr/professionnels/etudes-et-rapports/etudes-prospectives/le-marche-de-lanimation-en-2024_2404566
フランスCNCのレポートから その2「配信で存在感を示す日本アニメ」に続く