『君の名は。』の世界的なヒットで、その名をさらに高めるコミックス・ウェーブ・フィルムの最新作が米国に登場した。米国最大のアニメ・マンガの祭典Anime Expo 2018で、中国のハオライナーとコミックス・ウェーブ・フィルムが合作した『詩季織々』がプレミア上映された。
『詩季織々』の一般上映は、これが世界最速。8月4日公開の日本、そして中国よりも先となった。世界に向けた作品というわけだ。イベント会場最大5000名収容のホールには多数のファンが詰めかけ、その関心の高さが窺われた。
日本からはオムニバスの1本、「小さなファッションショー」の竹内良貴監督とコミックス・ウェーブ・フィルムの川口典孝社長も参加して、作品についてたっぷりと語った。
Netflixのチーフアニメプロデューサーの櫻井大樹氏の紹介により、まず上映からスタート。数千人ものファンにも関わらず、会場はピーンと張りつめた雰囲気。全員が作品に魅せられた様子で、コミカルなシーンでは時折、笑い声が起こる。
『詩季織々』は「陽だまりの朝食」「小さなファッションショー」「上海恋」の3篇の短編から構成されるオムニバスである。日中の異なる監督が中国の若者たちの青春を描く。3篇に共通するのは若い頃に誰もが直面する悩みだったり、ほろ苦い経験だ。上映後には大きな拍手が巻き起こった。Anime Expoでの観客に、作品は確実に胸に響いたようだった。
上映後に、竹内良貴監督と川口典孝氏が登壇。盛りだくさんの質問にたっぷりと答えた。「『秒速5セントメートル』に似ているよね」と川口氏。それもそのはずで、本作は『秒速5セントメートル』を見たハオライナーの代表が長年、熱心にコミックス・ウェーブ・フィルムにアプローチしたことで本作は実現したのだという。そこからオムニバス形式、若者たちを描くという『詩季織々』のコンセプトが生まれている。
監督は中国から2人、そして日本から竹内良貴監督が起用された。その竹内監督は、学生時代にすでに『秒速5セントメートル』の制作に参加している。以来、ずっと新海監督の一番近くで仕事をしてきた。
「新海さんのやってきたことをどこまで取りこめるか」との話す一方で、「同じことをやったら絶対勝てない。どうやって自分らしさを出すか」と考えた。その結果、「新海さんはやっていないだろう」という姉妹の物語に行き着いた。
日本と中国との合作という取り組みについても多く語られた。「日本と中国は隣にあるのに、実際は文化が相当に異なるのに苦労した」と川口氏は話す。竹内監督も「経験してきたことや、その時代や流行とかが違っていた。同じことを言っているけどイメージしていることが違う」と。またネイティブな感覚がない外国人が中国を描く課題を、海外に拓かれた杭州を舞台にすることで乗り越えたとする。
結果として、素晴らしい作品が誕生したのは、会場での反応が示している。川口氏は「日中合作は失敗の歴史だった。そのなかで本作は大成功になった」と自信を見せる。会場からは中国系の参加者からとりわけ熱心な質問が相次いだのもそれを証明していそうだ。