日本のコンテンツに基づいた、米国ハリウッドとの共同製作を目指す株式会社All Nippon Entertainment Works(ANEW)の経営体制が再び変わる。同社の親会社であるフューチャーベンチャーキャピタルは、2017年10月31日付で保有する同社の株式の全て(99.6%)を新設会社のANEW Holdings株式会社に譲渡したと発表した。譲渡価額は4500万円となる。
ANEW Holdings株式会社は、2016年11月よりANEWの取締役を務めてきた伊藤航氏が全額出資で2017年9月20日に設立した。代表取締役には伊藤氏に加えて、フューチャーベンチャーキャピタル出身でANEW代表取締役社長CEOである藤永裕二氏も就任している。
ANEWは2011年10月に、日本のマンガやアニメ、ゲーム、小説などのコンテンツを原作にハリウッド企業と手を組んだ映像共同製作を実現する会社として設立された。国内産業活性化や企業再生を行う官民投資ファンド会社である産業革新機構が出資をしていた。
しかし設立から6年あまり、大きな成果を残すことなく、2017年6月に京都のベンチャーキャピタルであるフューチャーベンチャーキャピタルに売却された。ベンチャーキャピタルのもとで、産業革新機構では難しかった映画製作の資金調達の役割を期待された。
売却から半年足らずで、今度は経営者によるMBO(マネジメントバイアウト)を実施した。フューチャーベンチャーキャピタルは、コスト削減の結果、自主的な経営に一定の目処が立ったとする。そのうえで独立性をもったスピーディーな意思決定が有益であることを理由に役員からのMBO提案を受け入れたとしている。フューチャーベンチャーキャピタルは、ファンド組成での連携は今後も続ける。
フューチャーベンチャーキャピタルは、株式売却により1億7200万円の特別損失を計上する。しかし、6月のANEW取得に伴い特別利益を計上しておりトータルでの損失はないとみられる。一方で、今回の譲渡で株式売却利益1000万円を計上する。このことから6月のANEW買収の際には非公表とされていた譲渡価額が3500万円であったことが分かる。
また今回の譲渡に伴いANEWの過去3年間の業績も開示されている。2014年12月期、2015年12月期は売上がなく、2017年12月期には1500万円の売上があった。一方で、14年、15年、16年にそれぞれ4億3300万円、4億3100万円、3億4700万円の最終赤字を計上していた。
これまで苦しい経営を強いられてきたANEWの新しい体制での、ビジネス再構築と収益化が期待されることになる。