東映アニメーションが上半期の事業を終えて、その好調ぶりが際立っている。10月27日に2018年3月期第2四半期決算を発表したが、連結売上高、各利益で過去最高を記録した。
売上高は前年同期比18.6%増の234億4400万円と早くも200億円の大台を突破。営業利益59億6200万円(34.7%増)、経常利益62億8100万円(36.2%増)、当期純利益42億9100万円(25%増)と、利益の伸びが大きい。
■ 業績を支える「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」は世界2億ダウンロード
好調を支えるのは、作品やキャラクターの2次展開が中心の版権事業の急伸である。売上高で52.5%増加の130億1900万円で全体の半分を超えている。営業利益も60億9700万円の56.5%増。とりわけ海外版権の伸びは大きく、91.8%増の62億3300万円とほぼ倍増した。
事業を牽引するのは「ドラゴンボール」のゲーム関連である。国内ではアプリゲームの「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」が前期をさらに上回る好調となった。
「ドッカンバトル」は日本だけでなく、海外でも人気が高い。リリース以来、全世界での累計ダウンロード数は2億を超えている。App Storeの売上ランキングでは14ヵ国で1位を獲得するなど、日本を代表するタイトルになっている。さらに北米では家庭用ゲーム「ドラゴンボール ゼノバース2」のヒットも貢献した。
しかしゲーム関連の好調で見落としがちだが、事業全体でみると必ずしも全体が伸びているわけでないのは注意が必要だ。映像制作・販売事業は売上高76億6700万円と7.2%の増加になったが、営業利益は10億1000万円と36.0%減少している。
テレビアニメ部門は制作タイトル数が4作品から6作品に増えたこともあり、前年の16億9100万円から17億9300万円に増えたが、『ONE PIECE FILM GOLD』の反動がでた劇場アニメ部門は9億9800万円から半減の4億2100円、映像パッケージ中心のコンテンツ部門はほぼ前年並みの3億9100万円だった。
一方ここでも海外事業は好調で、海外向けの映像販売が18.5%増の38億9600万円になった。中国向けの配信権、 北米向けの「ドラゴンボール」シリーズが増収につながった。
■ アニメ業界のトレンド「アプリゲーム」、「海外」、「配信」で成果
配信ではそのほか事業でも、国内での映像配信権販売が好調と報告している。定額配信の市場の拡大が大幅な増収につながっている。
東映アニメーションの決算は、現在のアニメ業界のトピックスである「アプリゲーム」、「海外」、「配信」といった傾向が明確に現れる。こうしたトレンドを捉え、ビジネスにつなげるのが、東映アニメーションの強さといえる。中国向けのアプリゲームでは、2017年にから18年にかけて『聖闘士星矢』、『ONE PIECE』、『デジタルモンスター』、『アラレちゃん』などで新作が続々投入される。
■ 制作環境の向上、昼型勤務の推進へ
高水準の利益は、さらに今後のビジネス開発、制作環境と技術の向上に投資されることになりそうだ。
企画ではAmazonプライムと協力した『正解するカド』に続き、Netflix向けの『Knights of the Zodiac: 聖闘士星矢(仮)』の製作が進んでいる。『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』は海外向けタイトルとして、イタリア、フランスで先行公開する。
制作体制では、大泉スタジオの建替えが8月に竣工した。18年1月から本格稼働する。制作環境の向上や最新設備などで生産性の向上が期待出来る。
ハードだけでなく、ソフト面の改革も進む。夜型勤務が多いとされるアニメ業界の中で、昼型勤務のシフトを推進する。このなかでクオリティと生産性の維持、向上を目指す。
こうした投資の成果は、短期的というよりも、中長期的なものなるとみられる。しかし近年、急成長を遂げる東映アニメーションがさらに成長するかは、こうした取り組みの結果が左右することになるに違いない。