日本映画製作の新たなスキーム構築を目指した取り組みが、この春からスタートする。映画製作のベンチャー企業「K2 Pictures」は、2024年5月10日にクリエイターへの還元を目指したプロジェクトを発表した。プロジェクトはまず国内外投資家による映画製作ファンド「K2P Film Fund I」を立ち上げる。
またプロジェクトには岩井俊二、是枝裕和、白石和彌、西川美和、三池崇史といった日本を代表する映画監督が参加する。またアニメ業界からも、『呪術廻戦』や『チェンソーマン』の制作で知られるMAPPAが参加する。大掛かりな取り組みになりそうだ。
K2 Picturesは東映の元プロデューサー紀伊宗之らが、2023年夏に立ち上げた映画製作会社である。映画や映像番組を中心に製作や制作請負する。主要株主にはアカツキやアニメ製作のカラーの名前もある。
紀伊は『シン・仮面ライダー』、『孤狼の血』のプロデュース代表作があると同時に、東映時代には映画製作・興行・配給でこれまでにない取り組みを数々手がけてきた。新プロジェクトでも、そうした手腕が発揮されそうだ。
プロジェクトで目を惹くのは、“クリエイターへの還元”を強く打ち出していることだ。K2P Film Fund Iでは、国内・海外からこれまでの映画製作出資とは異なる投資家の日本映画産業への参入を促すとしている。新たな仕組みのなかで、クリエイターへの利益還元を目指す。
これまでの国内映画制作は、製作会社からの受注や製作予算の限られたインディーズが多く、現場スタッフは諸外国に比べて厳しい環境にあるとされている。K2P Film Fund Iで投資家と制作会社や監督などのスタッフが直接結びつくことで、資金の流れを変える狙いがありそうだ。プロジェクトに著名監督が多く参加するのも、そうした新しいスキームの構築を期待してのものだろう。
ファンドには海外からの参加を強く期待しているとみられる。5月18日には、カンヌ国際映画祭開催中のフランス・カンヌ市のJWマリオット・カンヌにて、K2 Picturesによるプレゼンテーションと記者会見が実施される。
K2 Picturesのビジョンとファンド組成の詳細を発表する。当日は、K2 Pictures代表取締役CEO 紀伊宗之、さらに三池崇史、西川美和の両監督も登壇する。また今後デビューする新人監督も明らかにされる。
日本映画や監督は、現在も海外映画祭や批評家の間では評価が高い。しかし、必ずしもそれが興行や新作のファイナンスや製作の実現につながっていない。そうした状況がK2 Picturesにより変えることが出来るのか、日本とそして海外の映画業界・映画人から注目を集めることになりそうだ。
K2 Pictures https://k2pic.com