1980年代後半から長年アニメファンに愛されてきた『機動警察パトレイバー』の新アニメシリーズ、世界的に人気のマンガ家・浦沢直樹の傑作『PLUTO』。魅力たっぷりの複数のアニメ企画が、フランスで開催中のアヌシー国際アニメーション映画祭で明らかになった。
6月13日からスタートした国際アニメーション見本市MIFAのジェンコブースで、未発表のアニメ企画が数多く紹介された。なかでも目を惹いたのが『PATLABOR EZY』とタイトルされた作品と、『PLUTO』である。
『機動警察パトレイバー』は1988年にOVAとしてスタート。ほぼ同時にゆうきまさみによるマンガも連載を開始した。その後、テレビアニメシリーズや3本の劇場アニメなどメディアミックスを駆使して世界観を構築するプロジェクトが進行、これが人気を博した。
近年は押井守総監督/監督による『THE NEXT GENERATION パトレイバー 』、吉浦康裕監督による短編新作が話題を呼び、『機動警察パトレイバー』への関心が高まっている。
『PATLABOR EZY』は、そうした中で明らかになった新たなアニメシリーズだ。発表したジェンコはかねてより新作企画に取り組んできたが、アヌシーで正式発表、タイトルが明かされたのは今回が初になる。国際見本市に合せたジェンコのラインナップの目玉となっている。
ジェンコは1997年に現代表取締役の真木太郎が設立したアニメ・映像の企画・プロデュース会社である。企画・プロデュースには、『この世界の片隅に』やアニメ『ソードアート・オンライン』、『のだめカンタービレ』、『千年女優』などのヒット作がある。
今年のアヌシーでは『この世界の片隅に』が長編コンペティションにノミネート、有力候補になっている。それに合わせて、MIFAには初めて出展した。
『PATLABOR EZY』ではポスターの上部に書かれた「HEADGEAR PRESENTS」の文字がファンの興味を惹きそうだ。ヘッドギアは『機動警察パトレイバー』のクリエイションのために結成されたグループで、ゆうきまさみ、出渕裕、高田明美、伊藤和典、押井守といったトップクリエイターが参加する。
近年の実写『THE NEXT GENERATION パトレイバー』は押井守監督の作品で、ヘッドギアは原作としてクレジットされたのみであった。制作スタッフが未発表なだけに、どのようなかたちで作品に関わるのか気になる旧作ファンは多そうだ。今回はリリース時期や形式も発表されておらず、日本での新情報が待たれる。
一方、『PLUTO』は、手塚治虫のマンガ『鉄腕アト』の人気エピソード「地上最大のロボット」を浦沢直樹が新たな解釈でマンガとして描いた。第9回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するなど評価が高い。
ジェンコによれば、本作のアニメ制作は丸山正雄プロデューサーが代表取締役を務めるスタジオM2になる。丸山プロデューサーは、マッドハウス時代に『MONSTER』や『MASTERキートン』、『YAWARA!』などの浦沢作品のアニメ化を多く手がけただけに今回も期待がかかる。『退魔針』も、スタジオM2とジェンコの作品だという。
また、アヌシーではMAPPAがTOKYOピッチで紹介した木村真二監督の『Mechronicle!』も、ジェンコがプロデュースを担当する。このほか『ガールズジョキー』、サッカーアニメ『Winddy Klito』といった新企画もラインナップされている。
『PATLABOR EZY』以外は、全て仮のビジュアルとしており、これからさらにビジネスパートナーを募り、企画をブラッシュアップさせて行くとみられる。逆に『PATLABOR EZY』が、現時点で最も企画の進んでいる作品と考えていいだろう。