内閣府の知的財産戦略本部は、この4月に映画産業の振興に関する報告書「我が国映画の更なる発展に向けて」をとりまとめた。知的財産戦略本部に設けられた「映画の振興施策に関する検討会議」においての国内映画産業に関係する有識者の討論を反映させたものである。検討会議は2016年12月から17年3月まで4回、有識者の参加によって開催された。
報告書では映画産業振興のための課題を、「製作支援・資金調達」、「海外展開」、「ロケーション支援」とし主に3点を抽出している。さらに各課題の解決のために政府がとるべき施策の方向性を提言している。
知的財産戦略本部は2003年に内閣府に設置され、継続的に日本の知的財産に関わる分野の国際競争力の視点から、その産業施策を討議している。現在は「知的財産推進計画2017」の策定に向けて、複数の個別テーマの検討委員会を設けている。
2017年の特長は、映画・アニメ・マンガ・音楽・ゲームなどカバーするコンテンツ分野会合とは別に、映画単独の振興施策の検討がされていることだ。日本の映画産業は長年、米国に次ぐ第2位の市場であったにもかかわらず、近年は横ばいが続き、成長が続く中国に追い抜かれるなど伸び悩んでいる。そこで海外展開を含めて産業振興のありかたを検討し、問題点を明らかにしている。
今回の報告書のまず大きな論点は、映画製作の構造である。ここでは主に資金調達、プロデューサーなどのスタッフの人材育成にファーカスしている。
産業基盤を維持するために、中小制作会社へのリスクマネーの供給を課題のひとつに挙げる。官民ファンドの活用により企画開発、製作段階の資金を供給する。
人材育成も、産業基盤維持の重要な点だ。これについては内閣府に「クールジャパン人材育成検討会」を設置する方向だ。より深い議論を図る。
知的財産戦略本部が全体で大きく取り上げる海外展開、そして海外から仕事や人を呼び込むロケ撮影の2つも重要なテーマとなっている。しかし海外展開についても、中小制作会社と資金調達が大きなテーマに浮上している。製作の課題と連携している。ここでは資金調達方法の確立を目指した検証事業を実施することを盛り込んでいる。2017年以降、何かしらのアクションがありそうだ。
ロケーション支援では、映画産業のグローバル化を目的に「ロケ撮影の環境改善に係る官民連絡会議」を設置する。政府によるロケーション支援体制を構築する。撮影のための許認可情報や優良事例の情報共有を図る。
今回の報告書は、他の検討委員会「産業財産権分野」「コンテンツ分野」「新たな情報財」と共に知的財産推進計画2017に盛り込まれる。新たな推進計画は、本年夏に決定する。