大手エンタテイメント企業カドカワは、2017年3月期第3四半期決算を2月11日に発表した。出版、映像、ゲーム事業は好調だったものの、ドワンゴの領域となるポータルサイト運営などのウェブサービス事業が低調で、売上げ、経常利益はほぼ前年同期並みだった。
第3四半期までの売上高は1504億2800万円(3.0%増)、営業利益は73億8800万円(17.5%増)、経常利益は75億6500万円(0.6%減)。また当期純利益は55億8500万円(4.9%増)である。出版事業、映像・ゲーム事業は増収増益、ウェブサービス事業が減収減益となった。
■ niconico有料会員初の減少、ニコニコチャンネルに事業注力
ウェブサービス事業の売上げは234億7600万円(5.4%減)、営業利益は23億6700万円(39.0%減)。ライブ事業が依然赤字であることが影響している。カドカワは、「ニコニコ超会議2016」のコンテンツ制作費用が前回を上回ったことも理由に挙げている。
さらにコンテンツプラットフォームの競争が増していることから、動画配信プラットフォームのniconico(ニコニコ動画)の高画質化やインフラ再構築、HTML5対応を行った。これによるコストの増加も響いた。
また当該期にウェブサービス主要事業である動画配信プラットフォームのniconico(ニコニコ動画)の有料会員が初めて減少している。第3四半期のプレミア会員は252万人、前期(第2四半期)の256万人より4万人少ない。
Niconicoは月額見放題の定額課金サービスをいち早く導入したが、近年の映像配信プラットフォームの競争激化に巻き込まれている可能性が高い。有料サービス以外でも月間アクティブユーザーが前期の954万人から919万人に、一日のアクティブユーザーが346万人から331万人に減少している。
カドカワは公式チャンネルサービスのニコニコチャンネルに注力することで、今後の成長を狙っている。1119ある月額有料チャンネルの有料会員数は2016年末の段階で60万人、こちらは前期より4万人増加した。
■ 出版、映像、ゲームに『君の名は。』効果
一方で、出版事業は引き続きメディアミックス関連の作品が牽引した。テレビアニメ化された『Re:ゼロから始める異世界生活』、『文豪ストレイドッグス』、『この素晴らしい世界に祝福を!』が好調だった。映画が大ヒットになった『君の名は。』の関連書籍もヒットになっている。
売上高は825億7900万円(7.3%増)、営業利益は61億5100万円(59.3%増)。雑誌部門の赤字縮小もあり、利益が大きく伸びた。
『君の名は。』の大ヒットの影響がより大きかったのは、映画に製作出資もした映像・ゲーム事業である。映画の配給収入が売上げが、とりわけ利益を引き上げた。さらに『劇場版 艦これ』、映像ソフトでは『ARIA The ORIGINATION』、ゲームでは『DARK SOULS Ⅲ』が好調だった。アニメの配信権、さらに『文豪ストレイドッグス』や『NEW GAME!』などの海外ライセンス販売も伸びた。
売上高は322億3500万円(8.1%増)、営業利益は26億7100万円(69.9%増)。こちらも利益の伸びが大きい。