エンタテイメント大手のカドカワは、2017年5月11日に17年3月期通期の決算発表をした。売上高は2057億1700万円とほぼ前期並み(2.4%増)であったが、利益は減少した。営業利益が84億1900万円(7.7%減)、経常利益が74億700万円(27.4%減)、当期純利益は57億6700万円(15.8%減)である。
主要事業のうち出版事業増収増益と好調だが、Webサービス事業は減収減益と苦戦した。またスクール事業、埼玉県所沢の新施設の事業開発・調査費用、e-コマース、コンテンツ販売事業を含むその他事業は減収で営業損失を拡大している。
なお当該期は事業セグメントの再編を行っている。Webサービス事業は、従来のWebサービスにモバイル、ライブ(イベント)の各事業を新たに含んでいる。出版は書籍と情報メディアを統合、映画・ゲームは映像とゲームを統合している。
Webサービス事業は、売上高312億7500万円(5.6%減)、営業利益は28億1500万円(39.3%減)と利益面での減少が大きい。「ニコニコ超会議2016」の事業費が拡大したほか、コンテンツ配信の「niconico」に向けたインフラ投資が嵩んでいる。
出版事業の好調は、アニメと連動した書籍、そして電子書籍・雑誌が牽引している。在庫管理の効率化も貢献した。売上高は1130億1200万円(7.4%増)、営業利益は83億4200万円(32.8%増)。
映画が大ヒットした『君の名は。』の関連書籍、アニメ化がヒットとなった、『ソードアート・オンライン』、『この素晴らしい世界に祝福を!』、『Re:ゼロから始める異世界生活』が好調だとしている。雑誌部門は赤字であったが、赤字幅は縮小している。
映像事業は売上高444億200万円(0.3%増)、営業利益は33億1200万円(8.4%減)と前年並みである。映画配給収入が『君の名は。』を中心に、大きく伸びた。映像パッケージは『ARIA The ORIGINATION』、『ジョーカー・ゲーム』、『ストライクウィッチーズ』が堅調、海外販売は『文豪ストレイドッグス』、『ハンドシェイカー』、『NEW GAME!』、『幼女戦記』が中心である。
ゲームは、『Re:ゼロから始める異世界生活-DEATH OR KISS-』、「ダンガンロンパ」シリーズ、「ウィッチャー」シリーズがだった。しかし、ソーシャルゲーム向けのタイトルが不振で、利益が想定を下回った。
その他事業は、売上高は202億900万円(5.3%減)、営業損失が16億3500万円(前期10億1100万円の損失)である。
18年3月期は、慎重な見通しとなっている。売上高は2120億円(3.1%増)とする一方で、利益は二桁マイナスを予想する。営業利益58億円(31.1%減)、経常利益62億円(16.3%減)、当期純利益35億円(39.3%減)である。
業績の鍵は、Webサービス事業が成長軌道を取り戻せるかになりそうだ。そこで、市場の競争が激化している配信サービスでは「niconico」の新バージョン「niconico(く)」のリリースを予定する。ユーザビリティの向上で、勝ち残りを目指す。ユーザー数が堅調に伸びている月額課金型の個別コンテンツ販売の「ニコニコチャンネル」も依然、重要施策になる。
またコンテンツ差別化では、引き続き得意とするネットとリアルの連動を目指す。「ニコニコ超会議」の開催やニコニコ本社のコラボカフェを推進する。