書店チェーンの紀伊國屋書店が、マンガのアラビア語翻訳で中東・北アフリカ市場を開拓する。紀伊國屋書店は集英社より高橋陽一の人気マンガ『キャプテン翼』のアラビア語翻訳出版の権利許諾を獲得し、2017年1月1日に第1巻を発売した。
本作は既刊が第37巻まであるが、全巻の刊行と発売を予定している。販売は、アラブ首長国連邦、イラク、オマーン、カタール、クウェート、バーレーンの湾岸諸国、イエメン、サウジアラビア、シリア、ヨルダン、リビア、レバノン、パレスチナ自治区の中東諸国をほぼカバーする。さらにアルジェリア、エジプト、スーダン、チュニジア、モロッコ、モーリタニアと北アフリカのアラビア語圏も対象とする。
今回の刊行は紀伊國屋書店が企画のうえ、大日本印刷が印刷、さらに紀伊國屋書店ドバイ店が販売元になる。
また翻訳はシリア出身で東京外国語大学に留学するカッスーマー ムハンマド ウバーダ氏が務めた。アラブ地域では長年アニメ版『キャプテン翼』が高い人気を誇ってきたが、名前などが現地風に変更されていた。しかし、今回は日本のマンガであることを押し出し、敢えてオリジナルのままにする。地域のファンにとっては、古くて新しい作品になりそうだ。
紀伊國屋書店は国内大手書店チェーンとして知られるが、海外でのリテールでも積極的だ。米国にはニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど10店舗を展開、シンガポールに5店舗、台湾に4店舗、インドネシア、タイに各3店舗、さらにマレーシア、オーストラリア、ドバイにも店舗を持つ。
書店の大半は在留日本人というよりも、現地の人たちで、日本文化を中心に幅広いポップカルチャーが強みになっている。なかでも品揃えが充実した日本の翻訳マンガは人気だ。
アラブ圏のビジネスハブに設けられたドバイ店は高級ショッピングセンターに位置する大型店舗で、中東地域に日本のマンガやフィギュアを届ける。紀伊國屋書店は同店を通じて、地域での日本コンテンツに対する関心の高さを認識し、今回の企画を実現したという。今後も、日本コンテンツのアラビア語翻訳出版を目指す構えだ。
アラブ圏は人口が多く、また国民所得の高い地域も少なくない。市場が開拓出来れば大きな可能性も開ける。紀伊國屋書店の試みの行方が関心を呼びそうだ。