
コロナ禍から明けた後も、世界的に不振が続いていた世界の映画興行ビジネスは2025年に落ち着きを取り戻し、薄日も見えてきた。世界映画市場のトップ2である北米と中国で興行収入が前年を上回った。
2025年の北米興行収入は89億ドル(約1兆4000億円)と前年の87.8億ドルをわずかに上回った。しかし、この水準はコロナ禍前の2017年、18年、19年の110億ドル超え、一貫して100億ドルを超えていた2010年代の水準を下回る。緩やかな回復と見たほうがようさそうだ。
それでも全米公開された映画本数は、ハリウッドレポーター誌によれば112本、前年の94本を大きく超え、2019年の120本以来の水準だ。ハリウッド映画の製作が回復基調にあることが分かる。全米公開した作品には、興行収入で週末1位となった劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』や劇場版『チェンソーマン レゼ篇』といった日本アニメも含まれる。それぞれ北米年間興行の18位と48位につけた。
北米最大のヒットは人気ゲームを原作とした『マインクラフト/ザ・ムービー』、次いでディズニーの人気アニメーションを実写映画化した『リロ&スティッチ』、そして『スーパーマン』、『ジュラシック・ワールド/復活の大地』など長年、 高い人気を持つシリーズ作品が続く。アニメーションでトップはピクサーの大ヒット作の続編『ズートピア2』が12月末までの北米興行収入は3億2000万ドル(約500億円)を超えて1位だ。
ハリウッド映画により明るい兆しがあったのは、中国市場である。近年、米国映画の不振が続いていたが、11月26日に中国公開された『ズートピア2』は興行収入40億元(約900億円)と中国で年間2位となった。この数字は北米興収を大きく超える。
また12月19日に公開されたばかりの『アバター3』も7億5000万元を超えている。今後の米国映画の中国展開に期待がつながる。
その中国の2025年の年間興行収入は、517億元(約1兆1500億円)と前年比で21%増の大きな伸びとなった。ただし、こちらもコロナ禍前、2017年、18年、19年が800億元超えであったことを考えれば、完全復調とまではいえない。
2010年半ばには、数年以内に北米市場を規模で抜くと予想されていたが、2025年も世界最大市場は北米、次いで中国との並びは変わらない。
こうしたなか好調ぶりが際立つのが、世界第3位の映画市場の日本である。市場規模は北米、中国の数分の一程度だが、2025年は11月までにおよそ2400億円、通年で2019年の2611億円を上回り、過去最高になる可能性が高い。コロナ禍の混迷をいち早く抜け出すことになる。
全体を牽引したのは歴代2位の興行成績を打ち立てる劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』、『名探偵コナン 隻眼の残像)』 、興収100億円を超えた劇場版『チェンソーマン レゼ篇』などのアニメ映画。さらに 年ぶりに実写邦画の興行記録を塗り替えた『国宝』 などである。










