世界最大規模のアニメーション映画祭として知られるフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で、今年も日本から多くの長編作品が上映される。映画祭を運営するCITIAは2023年4月27日、パリ市内でプレスカンファレンスを開催、2013年の長編コンペティション部門、長編コントルシャン部門の公式作品を発表した。
またWorks in Progress部門やイベント上映作品のラインナップも明らかにした。コンペティションはもちろん、これらの部門にも長編を中心に日本アニメが多数選ばれている。いずれも6月11日から17日の映画祭期間中に上映される。
まず注目されるのは、映画祭の華となるコンペティション部門である。作品は全部で11本、日本からは原恵一監督の『かがみの孤城』、田口智久監督の『夏へのトンネル、さよならの出口』が選ばれた。
『かがみの孤城』は日本では2022年12月に公開、辻村深月の原作を丁寧にドラマ化して高い評価を受けている。監督の原恵一は『カラフル』、『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』、『バースデー・ワンダーランド』に続き4作品連続の長編コンペティション入りとなる。これまでに3つのアワードの受賞経験もあるだけに、アヌシーでも注目を浴びそうだ。
『夏へのトンネル、さよならの出口』も小説が原作、映画は22年9月に全国公開し、第32回日本映画批評家大賞 アニメーション作品賞を受賞するなどこちらも評価が高い。監督の田口智久は脚本も手がけた。
これまでも『BLEACH 千年血戦篇』や「PERSONA」シリーズ、「デジモンアドベンチャー」シリーズなど海外で人気の高い作品を多く監督している。日本アニメファンに人気な作品が多く、80分あまりで完結するジュブナイルなドラマづくりは、田口監督の新たな一面を映画祭でアピールすることになりそうだ。
長編コンペティションは、これ以外は西ヨーロッパを中心とした国際共同制作が多い。そのなかでハンガリーから『Four Souls of Coyote』(Áron Gauder監督)、米国を中心とした『The Inventor』が選ばれている。
また『すずめの戸締まり』と共にベルリン国際アニメーション映画祭の本コンペに選ばれた中国のリウ・ジエン監督の『Art College 1994』がある。こちらも話題を呼ぶだろう。
長編コンペティション部門、長編コントルシャン部門共、映画祭の最終日17日、各賞が発表される。
昨年は山村浩二監督の『幾多の北』がグランプリになったコントルシャン部門には12本。『駒田蒸留所へようこそ』がノミネートされている。監督は『有頂天家族』などの吉原正行、製作はDMM.com、アニメーション制作はP.A.WORKS、国内配給はギャガが決まっている。原作も映画のために開発されたオリジナル作品である。
コントルシャン部門は斬新な表現や新しさにフォーカスしており、長編コンペより多彩な表現が並ぶのが特徴だ。異色のベテランであるビル・プリンプトン監督の最新作などもある。
映画祭によれば、今年の長編コンペティションには100本以上のエントリーがあった。そこから長編部門、長編コントルシャン部門に合わせて23作品を選出したが、こうした長編への存在感を反映してか、コンペティション以外の部門でも長編作品が多い。4月30日現在でイベント上映は23本、WORK IN PROGRESSが12本、さらに野外上映プログラムも今後発表されるから、少なくとも50本以上の作品が上映されることになりそうだ。
本数が多いだけに見逃せないタイトルは多い。それでも神山健治監督がワーナーブラザースと共に製作している『ロード・オブ・ザ・リング ロヒアリムの戦い』の初出し、中国のヒットメーカー田暁鵬監督の最新作『深海』、山田尚子監督の中編『Garden of Remembrance』は押さえておきたい作品だ。
イベント上映はこれ以外にも日本作品が多い。『BLUE GIANT』(立川譲監督) 、『名探偵コナン黒鉄の魚影』(立川譲監督)、『大雪海のカイナ』(安藤裕章監督)、『北極百貨店のコンシェルジュさん』(板津匡覧監督)、『THE FIRST SLAM DUNK』(井上雄彦監督)がある。Works in Progress部門の久野瑤子監督の『化け猫あんずちゃん』も、今後楽しみな作品だ。
・長編コンペティション部門 作品リスト
https://www.annecyfestival.com/the-festival/competition/2023:lm
・長編コントルシャン部門 作品リスト
https://www.annecyfestival.com/the-festival/competition/2023:lmcc
・上映イベント 作品リスト
https://www.annecyfestival.com/the-festival/competition/2023:se
・Work in Progress部門 作品リスト
https://www.annecyfestival.com/the-festival/competition/2023:wip