「夏へのトンネル、さよならの出口」、アヌシー映画祭長編部門で受賞

「夏へのトンネル、さよならの出口」、アヌシー映画祭長編部門

 日本の劇場アニメ『夏へのトンネル、さよならの出口』が、世界の大きな舞台で輝いた。2023年6月17日、フランスで開催されていたアヌシー国際アニメーション映画祭の最終日、クロージングセレモニーの授賞式のなかで長編部門のポール・グリモー賞(Paul Grimault Award)の受賞が発表された。今年の長編部門には世界からおよそ100本のエントリーがあったが、そのなかから最も優秀な作品のひとつとして選ばれたのだ。
 ポール・グリモー賞は長編部門の主要賞のひとつで、本年より設けられた。フランスの巨匠ポール・グリモー監督に因んで命名されている。従来の長編部門は、グランプリにあたるクリスタル賞と審査員賞、それに審査員特別賞の3つが設けられる年が多かった。ポール・グリモー賞は審査員特別賞に代わるアワードとみられる。
 長編部門では、グランプリにあたるクリスタル賞をフランスとイタリアの合作『リンダにチキンを!(Linda veut du poulet !)』、審査員賞はハンガリーの『コヨーテの4つの魂(Four Souls of Coyote)』が選ばれている。『リンダにチキンを!』は、日本でも公開され話題を博した『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』のセバスチャン・ローデンバックが妻であるキアラ・マルタと共同監督した。また観客賞とガン財団賞も受賞し、高い評価を獲得した。

 『夏へのトンネル、さよならの出口』は、日本では2022年9月に公開した田口智久監督による作品。八目迷の原作小説を、CLAPがアニメーション制作した。外の世界とは違う時間が流れ、中に入れば欲しいものが何でも手に入るとされるトンネルをみつけた男子高校生・カオルと女子高校生・あんずの人生の選択を描く。
 監督の田口智久は、本作で脚本・絵コンテ・演出も務めている。またアニメーション制作のCLAPは2016年設立されたばかり、長編映画は2本目というなかで大きな成果を残した。

「夏へのトンネル、さよならの出口」、アヌシー映画祭長編部門

左から2人目・田口智久監督、一番右・松尾亮一郎プロデューサー

 スピーチに立った田口監督は、「すごく雰囲気のいい映画祭でした。スタッフに街や美味しいものも紹介していただいて、ディアブルとアイスクリームがすごく美味しかったです」とまずはアヌシーの印象を話した。さらに作品について「いままではアクションの映画やアニメーションを作っていたのですけれど、この作品ではキャラクターのドラマや日常芝居が中心となって、すごくチャレンジしました。クオリティを持った作品にしたいと思い、映画を作る動機を探った時に自分の中にある人生にどう立ち向かっていくべきか、どういう風に生き続けていけばいいかを考えて作っていこうと思いました」と説明した。
 また2017年に審査員賞を受賞した『この世界の片隅に』の制作プロデューサーでもあったと、アーティスティックディレクターのマルセル・ジャンから紹介された松尾亮一郎プロデューサーは、「今回はCLAPという自分で立ち上げた会社で初めてアヌシーに来ました。CLAPは映画を中心に制作をしている会社で、田口監督をはじめたくさんの映画監督と仕事をしているのですけれど、まず映画祭に参加できるというのが夢であったので、大変光栄だと思っています」と、コンペインと受賞を喜んだ。また「少し変わった作品ではありますが、皆さんに楽しんでいただけるのではと思っています」と話した。

 2023年のアヌシー国際アニメーション映画祭は『夏へのトンネル、さよならの出口』のほか、コンペティション部門に原恵一監督『かがみの孤城』、長編コントルシャン部門に吉原正行監督『駒田蒸留所へようこそ』が公式出品されている。
 短編部門は1665本のエントリーがあり、日本出身でカナダにて制作をしたヨシダ・カホさんの『Tongue』が選出、学生部門に高玉馨さんの『ペットボトル虫 BOTTLED INSECTS』、キョガンさんの『Sewing Love』木原正天さんの『TOMOYA!』が選ばれている。テレビ部門では『チェンソーマン』、喜田夏記さんの『プチプチ・アニメ Liv&Bell』。ポリゴン・ピクチュアズがアニメーション制作を担当した『MECH CADETS』なども名を連ねる。イベント上映などでも日本作品は多く見られ、映画祭の盛り上げに一役を買った。

【2023年アヌシーアニメーション映画祭 主要な受賞作品】

[長編部門]
クリスタル賞

『Chicken for Linda!』 Chiara Malta/Sébastien Laudenbach共同監督
審査員賞
『Four Souls of Coyote』 Áron Gauder監督
ポール・グリモー賞
『夏へのトンネル、さよならの出口』 田口智久監督

コントルシャン部門グランプリ
『Robot Dreams』 Pablo Berger監督
コントルシャン部門審査員賞
『Tony, Shelly and the Magic Light』 Filip Posivac監督 

観客賞
『Chicken for Linda!』 Chiara Malta/Sébastien Laudenbach共同監督

[受託作品部門]
クリスタル賞

November Ultra “Come Into My Arms,” Tamerlan Bekmurzayev監督
審査員賞
The Beatles “I’m Only Sleeping,” Em Cooper監督

[テレビ部門]
クリスタル賞

『Pebble Hill』 Marjolaine Perreten監督
審査員賞 
Shape Island “Square’s Big Prank,” Drew Hodges監督
審査員賞(テレビスペシャル)
Scavengers Reign “The Wall,” Vincent Tsui監督

[学生部門]
クリスタル賞

『La notta』  Martina Generali/Simone Pratola/Francesca Sofia Rosso 共同監督
審査員賞
『The Harbourmaster』 Mia L. Henriksen/Konrad Hjemli 共同監督

詳細はアヌシー国際アニメーション映画祭公式サイトにて確認ください。
https://www.annecyfestival.com/the-festival/awards

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