2023年3月17日から22日まで、新潟市内にて「新潟国際アニメーション映画祭」が開催された。今年からスタートしたばかりの映画祭、新潟から日本と世界にアニメーション文化の発信を目指したものだ。
コンペティション部門のほか、マンガ家・映画監督の大友克洋にフォーカスしたレトロスペクティブ部門や最新の世界動向を示す世界の潮流部門、さらにフォーラム部門ほかいくつもの部門が設けられた。期間中は国内外からアニメーションの監督やスタッフ、プロデューサー、メディアが数多く新潟に訪れた。映画上映だけでなくスタッフトークやシンポジウムなどの企画が大きな盛り上がりを見せた。
映画祭の特徴のひとつになったのが、コンペティション部門である。世界のアニメーション映画祭の多くが短編作品から設計されるのに対して、敢えて40分以上の長編だけにコンペティションを絞ることで差別化を図っている。
今回は世界各国から10作品がコンペティションに選ばれている。これを押井守監督、プロデューサーのジンコ・ゴトウ氏、米国の配給会社GKIDS社長のデヴィッド・ジェステット氏らの審査員が審査し、最終日には授賞式にて4つの受賞作品が発表された。
グランプリはピエール・フォルデ監督の『めくらやなぎと眠る女』となった。村上春樹の6つの短編を独自の解釈でひとつの長編作品として再構成した意欲作であった。押井守監督は本作を「一見すると非常に地味なスタイルなんですけども、現代文学を表現する最適のスタイル」と讃え、3人の審査員の意見が一致した唯一の作品でもあると受賞理由を説明した。
フォルデ監督は授賞式が本作のフランス公開日と重なったことから来日が叶わなかったが、ビデオメッセージにて「新潟にいらっしゃる皆様、審査員の皆様、改めてありがとうございます、光栄です」と喜びの声を伝えた。
残りの受賞3作品は、奨励賞(Honorable Mention)が日本作品から『劇場版「ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン」』(監督:牧原亮太郎)。さらに傾奇賞(かぶく)賞にアルジェリアの『カムサ – 忘却の井戸』(監督:ヴィノム)が、境界賞はオランダ/フランスの『四つの悪夢』(監督:ロスト)が受賞した。
これらの3つの賞は審査の過程の中で、当初予定していた監督賞・脚本賞・美術賞などをひっくり返した生まれたユニークなアワードである。審査委員長である押井氏は、「アニメーションの表現は、本来からして多様なものなんです。その作品にフィットしたスタイルというものが必ず存在する。今回は作品の主旨をそれに一番適合したスタイルが存在するかどうか、通常の映画祭の審査とはやや異なる審査基準で決定しました。グランプリを除いた3つの賞を審査員が協議して新たに作り出した」と説明する。
つまり賞に合わせて作品を選ぶのでなく、作品に合わせて賞を生まれるとの発想だ。始まって間もない映画祭ならではの柔軟さと言える。
映画祭は2024年も同じ時期に第2回の開催を予定しているという。手探り状態であった第1回の経験が、第2回にどのようにつながるかが今後の鍵になるだろう。
新潟国際アニメーション映画祭
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