2021年の日本のマンガ市場は紙とデジタルを合わせて6759億円、過去最高を記録した。しかしマンガやコミックのビジネスが好調なのは、日本だけでないようだ。
2022年7月1日、北米のコミック業界の市場調査・データ分析をするComichronとICv2の2社は、2021年の北米(米国+カナダ)のコミック市場規模を発表した。定期刊行のコミックス、単行本形式のグラフィックノベル、それに含まれるマンガなどを合算した2021年の総売上高は、20億7500万ドル(約2800億円)と前年比で62%増にもなった。
これはコミックカルチャー全盛期であった1993年の過去最高16億ドルを大きく上回る。ComichronとICv2はインフレを考慮しても、市場規模は過去最大としている。世界的にコミックやマンガ売上げが、上昇トレンドにあることがわかる。
日本から気になるのは、前年比で2倍以上の売上げと既に伝えられる日本の翻訳マンガ出版の売上げだ。今回の調査では具体的な数値は挙げられなかったが、全体の成長を引き上げたのはグラフィックノベル部門で、さらにグラフィックノベルのなかでは「MANGA」が特に好調と伝えている。日本マンガの翻訳出版の急成長を確認させる。
同じように成長する日米だが、その売上げ構成には注意したい。日本では成長を続けるデジタルが紙出版を大きく上回るが、北米ではデジタル出版は1億7000万ドル(約230億円)と全体の8%程度に過ぎない。
この結果、北米のコミック (マンガを含む)の紙出版は日本円で約2600億円程度となる。これは日本のマンガ雑誌とマンガ単行本を合算した2645億円にほぼ並ぶ。かつては日本のマンガは世界でも飛び抜けた巨大な出版市場とされていたが、現在は必ずしもそうではなくなる。
またデジタルで注意したいのは、ComichronとICv2の市場規模調査は伝統的な流通マーケットの数字に基づいている点だ。この中のデジタル流通は、主にアマゾンなどの従来型の電子書籍に限定されていると思われる。日本のマンガ出版関係者からは、Webtoonなどの新たなビジネスモデルで市場を拡大するプラットフォームは含まれていないのではとの指摘もある。また北米で好調を伝えられるKADOKAWAの「BOOK☆WALKER」なども市場規模に換算されていない可能性がある。デジタルを含めた市場は今回の発表以上との見方となる。
北米は世界のエンタテイメントのトレンドセッターだけに、コミックやマンガ出版の拡大はさらに他国にも波及している可能性が高い。世界的にはアメコミや韓国勢が強みを発揮するWebToonも好調で市場の競争は増している。しかし成長市場を背景にすることで、日本マンガの海外展開もまだまだ成長の余地がありそうだ。
ICv2-Comichron COMIC SALES REPRT 2021
https://comichron.com/yearlycomicssales/industrywide/2021-industrywide.html