6月13日から6日間開催されたフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭は、18日にほとんどの日程を終え閉幕した。最終日夜のクロージングセレモニーでは映画祭の目玉となる各部門各アワードの発表があり、日本からも2作品が賞に輝いた。
ひとつは長編映画コントラシャン部門で、山村浩二監督の『幾多の北』グランプリ。同部門は長編作品のなかでも斬新で、新しい時代や表現にフォーカスしたものだ。山村浩二監督は、短編『頭山』や『カフカ 田舎医者』でアヌシー、広島、オタワ、ザグレブの4大アニメーション映画祭の全てでグランプリを獲ったことで知られている。今回は長編で再び世界に輝いた。今なお続く新しい表現へ挑戦が評価された。
『幾多の北』は制作面でも新たな取り組みになっている。フランスの新進アニメーション会社であるMIYUプロダクションとの共同製作により誕生したからだ。
もう1作品、短編部門で審査員特別賞に輝いた水尻自子監督の『不安な体』も、MIYUプロダクションが関わる。MIYUが日本のニューディアーと共同製作した。水尻も広島やサグレブ、アルスエレクトロニカなどで受賞を重ねるなど国際的活躍を重ねる作家である。今回はそうした実績を確認させる結果となった。
日本からも『グッバイ、ドン・グリーズ!』と『岬のマヨイガ』がノミネートされた長編部門オフィシャルコンペティションは、フランスとルクセンブルグが共同製作した『Le Petit Nicolas – Qu’est-ce qu’on attend pour être heureux ? 』がグランプリにあたるクリスタル賞に輝いた。日本勢は惜しくも受賞を逃した。日本の作品ではないが原作が村上春樹の短編小説をフランスのピエール・フォルデ監督した『めくらやなぎと眠る女』が審査員特別賞を受賞している。舞台が日本でもあり、今後国内でも注目を集めそうだ。
このほか短編部門のクリスタル賞はハンガリーとルーマニアの共同製作『Amok』(Balázs TURAI監督)。学生部門は韓国の『Persona』(Sujin MOON監督)が選ばれた。
映画祭だけでなく、マーケットも今年は大きな成功を収めた。3年ぶりの本格的なリアル開催ということで世界各国から多くの参加者が訪れた。
映画祭と国際見本市MIFAの登録参加者は最終的に1万3248人となった。参加国は106ヶ国。これはコロナ禍が始まる前の2019年と比べても8%上回る。主催するCTIAでは予想を大きく上回り、世界にとってのアニメーションの重要性を示せたとする。
さらにCITIAは2023年に向けてすでに動き始めている。クロージングセレモニーの最後には、来年の名誉国としてメキシコが発表された。映画祭、そしてMIFAの双方でメキシコのアニメーションにスポットを当てることになる。