中国ビリビリ第3四半期、配信関連で売上高が急伸も赤字拡大、M&Aに活路

ファイナンス決算

■売上げの中心はスマホアプリゲームからプラットフォーム運用へ
 上海に拠点を持つ中国のエンタテインメント企業ビリビリの売上高が拡大している。2021年11月17日に発表された2021年第3四半期 (21年1月~9月) までのビリビリの総売上高は136億200万元(約2400億円)と前年同期の81億5800万元(約1500億円)を大きく上回った。
 成長の原動力は映像配信プラットフォームだ。プレミア会員料金やライブ配信中の課金サービスなどを中心とする「付加価値サービス(Value-added services)」の売上高が前年の25億9600万元(約470億円)から50億4000万元(約900億円)と倍増した。また「広告」売上高も11億2000万元(約200億円)から29億3500万元(約520億円)と2.6倍にもなる。視聴者の増加に加えてビリビリの知名度拡大が売上に貢献したという。
 一方でこれまで収益の中心だったスマホアプリゲームなどの売上げからなる「モバイルゲームス」は伸び悩んでいる。売上高37億9500万元(約680億円)は前年同期から3%増の小幅な伸びにとどまっている。売上高で付加価値サービスに逆転された。Eコマースの売上高も7億6600万元(約130億円)から18億3100万元(約320億円)に急伸しており、これまでのスマホアプリ依存型のビリビリの売上げ構造が大きく変りつつある。

■相次ぎ関連会社買収で目指すもの
 売上拡大の一方で赤字経営からは脱しておらず、第3四半期までで赤字幅が拡大している。営業損失は前年の22億3700万元(約400億円)から44億2900万元(約800億円)とほぼ倍になった。これは売上高の約3割にも相当する。
 黒字化よりも売上げ成長を重視して、先行投資を拡大していることも理由だ。とりわけ今年に入ってビリビリはM&Aを加速させている。春には日本アニメスタイルを得意とするアニメーション会社絵梦(ハオライナー)を傘下に収め、4月にはゲーム配信プラットフォーム「TapTap」を運営するXD Networkに約1億2300万ドル(約140億円)、中国手遊(CMGE)にも出資した。さらに8月には歓喜伝媒に6600万ドル(約75億円)を投資した。

 こうしたなかビリビリは第3四半期決算発表直後の11月18日に14億ドル(約1600億円)の転換社債発行を発表した。大型資金調達で、さらなる企業買収に投じる構えだ。
 19日には中国国内で電子決済の浙江永益科技ペイメントの株式の65.5%を1億1800万元(約130億円)で取得、さらに22日にはファミリー・キッズ向けのCGアニメーション制作会社広東奥飛動漫文化股份有限公司を6億元(約18億円)で買収すると発表している。

■株価の乱高下が続いたこの一年
 しかし直近の業績や資金調達に対して、市場の反応は鈍い。株価は決算発表と転換社債発行を公表後、それまでの89ドル付近から65ドル前後まで急落した。そもそもビリビリの株価は今年夏以降、弱含んでいる。こちらは個別業績よりも、中国政府のIT企業やゲーム企業に対す規制導入などの締め付けに嫌気をさす一連の流れからビリビリも逃れることが出来なかったためである。これに四半期決算の赤字拡大、さらに転換社債発行で株式の需給が緩む懸念が株価下落につながった。現在の株価は2021年2月の高値157ドル66セントの半値以下になる。
 それでもビリビリの2018年3月のニューヨーク・ナスダック市場への上場株価は11.5ドル、依然3年半前の6倍の価格になっている。時価総額は264億ドル(約3兆円)あり、日本のバンダイナムコホールディングスの約2兆円の1.5倍にもなる。売上高8000億円、営業利益900億円のバンダイナムコHDよりも市場評価が高いというわけだ。
 背景には巨大な中国市場におけるポップカルチャー産業の成長性、多角化による事業拡大への期待があるのは間違いない。今後はそうした投資家の期待に応えるため、M&Aを初めとする先行投資各事業の成長加速と収益化という成果を見せることが必要になるだろう。

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