東映アニメーションが10月28日に発表した2017年3月期第2四半期決算は、連結売上高197億7400万円と6.8%増となった。一方で利益面では前年同期比マイナスとなり、営業利益44億2600万円(13.0%減)、経常利益46億1200万円(13.3%減)、当期純利益34億3300万円(3%減)だった。しかし、同社は決算発表に先立って通期業績予想を大幅に引き上げており、一年を通じては売上高、利益とも過去最高水準となる見通しだ。
好調の理由は、7月に公開した『ONE PIECE FILM GOLD』ヒット、そしてゲームアプリや海外向けを中心とした版権事業である。アニメ映像を核に周辺事業を広げていく戦略が効果を発揮している。
映像制作・販売事業は売上高71億5400万円(9.1%減)、セグメント利益は15億7800万円(39.4%減)。劇場アニメ部門が好調だったのに加えて、新たにゲーム向け音声制作事業を組み込んだテレビアニメ部門も伸びた。
海外向け番組販売は、「ドラゴンボール」シリーズのテレビ、劇場映画が好調だった。しかし、中国向け配信権の大口販売が下期にずれ込んだこともあり、大幅な減収となった。映像配信サービズは好調だったが、ソーシャルゲームは減収となった。
版権事業は、アプリゲームと海外の役割が大きかった。国内はアプリゲーム『ドラゴンボールZドッカンバトル』と、『ワンピース』の商品化権が主力だった。海外でも『ドラゴンボールZドッカンバトル』は好調で、さらに全世界で5,000万ダウンロードを突破した『ワンピーストレジャークルーズ』が大ヒットしている。売上高は85億3400万円(13.4%増)、セグメント利益は38億9500万円(16.0%増)だった。
商品販売事業は、売上高は33億2900万円(41.2%増)、セグメント利益は1億2400万円。『ONE PIECE FILM GOLD』の関連商品が好調であった。
好調が続く東映アニメーションだが、一方で今後の懸念も垣間見える。ひとつは、業績を支える版権事業で『ドラゴンボール』と『ワンピース』への依存度が高くなっていることだ。同様にゲーム化権への依存も大きくなっている。さらに海外では売上高に対する中国向けの比重が高い。いずれも特定の環境の変化次第では、失速する可能性を持っている。
実際に東映アニメーションでは、中国国内のコンテンツ規制や外資系企業に対する規制の懸念があると指摘している。リスクを念頭に入れたうえでの、中長期戦略は立てられていると見ていいだろう。
そうした現状を背景に、東映アニメーションは今後に向けた投資に積極的だ。制作現場の環境整備を目指した大泉スタジオの建替えは2017年8月に竣工する。さらに契約社員制度の導入より、退職給付引当金を増額した。
国内では同社初のフルCGテレビシリーズ『正解するカド』を2017年に放送開始する。またパイロット映像制作を強化し、新たなヒット作を探るなど、新たなテクノロジー、クリエイティブを開発する。
海外事業では、海外でのリリースを先行する企画や製作を進める。キャラクターショップやイベントの海外展開も始まった。海外での日本アニメの認知度が広がるなかで、従来の番組販売や版権ビジネスだけでない海外事業を探っている。