任天堂50%以上出資で「ゼルダの伝説」実写映画化、「マリオ」大ヒットで推進

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 映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界的大ヒットが業績に大きなインパクトを与える中、任天堂が新たなハリウッド映画製作に乗り出すことになった。2023年11月8日に発表された『ゼルダの伝説』の実写映画化、企画開発の開始である。
 『ゼルダの伝説』は1986年のファミコン向けソフトに始まる人気タイトルシリーズだ。累計売上本数は1億3000万本、今年5月に発売された『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』だけで1950万本を超える。超大型タイトルの映画化になる。

 実写映画化にあたっては、任天堂代表取締役フェローの宮本茂氏と米国の大物映画プロデューサーであるアヴィ・アラド氏が共同でプロデュースする。アラド氏はマーベル出身で数多くのマーベル作品の実写映画、最近では『スパイダーマン:スパイダーバース』にも関わっている。日本作品関連では、『攻殻機動隊』を原作とした『ゴースト・イン・ザ・シェル』がある。
 監督はウェス・ボールが決まっている。「メイズ・ランナー」シリーズを担当し、『猿の惑星/キングダム』の公開が控える実力派だ。

 宮本氏によれば『ゼルダの伝説』の実写映画化は、10 年ほど前から話し合いを続けてきた。映画化にあたっては世界のファンの期待を裏切らないものとしなければいけない、納得がいくものが完成するまでじっくりと時間をかけて制作する必要があると強調する。そのうえで映画が完成するまでをしっかり支えるために、任天堂が自らスポンサーとなって組むとする。
 制作費の50%以上を任天堂が出資し、ソニー・ピクチャーズが共同出資者となる。近年のハリウッド大作の製作費を念頭に置けば、任天堂だけでも数百億円規模の投資になるだろう。
 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界配給はユニバーサル・ピクチャーズだったが、本作ではソニー・ピクチャーズが世界配給を手がける。ソニー・ピクチャーズもハリウッドの5大メジャーの一角であることから、大掛かりな取り組みになりそうだ。

 10年以上企画が練られてきた『ゼルダの伝説』のプロジェクト正式発表は、2023年に公開された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の成功が念頭にあるだろう。世界有数のアニメーション・スタジオのイルミネーションが制作した本作は、興行収入で13億6125万ドル(約2000億円)、観客動員数で1億6984万人に達した。劇場興行だけでなく、DVDや動画配信でも多く鑑賞されている。
 本作からの任天堂への収益金額は明らかにされていないが、本作でも任天堂は出資しており、制作に深く関わった。任天堂は映画関連売上を「モバイル・IP関連収入等」に計上するが、2024年第2四半期はこの売上が前年同期の235億円から550億円に急拡大している。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の貢献と見られる。

 映画のヒットは、映画関連売上以外にも大きなインパクトを与えている。映画のヒットが拡大するに連れて、マリオ関連のグッズの販売も伸びたからだ。また10月20日に世界各地で発売したゲームソフト『Super Mario Bros. Wonder』の全世界累計販売本数は、発売後2週間で430万本となった。「スーパーマリオ」関連タイトルでは過去最高の販売ペースだ。これも映画化効果と見ていいだろう。
 ゲームソフトからキャラクター商品、テーマパークと任天堂のIPビジネスは近年、急拡大の様相を見せている。ここに新たに世界規模の映画化が加わる。今後も世界規模でメディアミックス戦略は拡大を続けそうだ。

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