東映アニメ5000億円企業視野 5年間で売上高2倍2000億円目指すVISION2030

東映アニメーション

■第2四半期減収減益も期初業績予想からは上振れ

 国内最大手のアニメ制作会社東映アニメーションは、2025年10月29日に、2026年3月期第2四半期の決算発表をした。連結売上高は449億5400万円(8.2%減)、営業利益は166億3800万円(2.1%減)と過去最高であった前期より小幅減少となった。
 映像製作・販売が前年にあった『スラムダンク』『ゲゲゲの鬼太郎』の国内配信権販売の反動で二桁減、また『THE FIRST SLAM DUNK』の反動があった商品販売も売上高で23.6%と下げ幅が大きかった。一方版権事業は海外向けに『ワンピース』『デジモン』『ドラゴンボール』が好調で増収増益であった。
 減収減益ではあるものの売上高では通期業績予想並み、利益面では期初予想から上振れしている。通期連結売上高880億円、営業利益260億円、経常利益267億円、当期純利益191億円の予想は据え置いた。

■5年間で売上高2倍、2000億円の中期経営計画

 しかし決算発表より注目を集めたのは、同日発表された新しい中期経営計画「VISION 2030」であった。2027年3月期から2031年3月期までの5年間の経営目標を示すが、5年後(31年3月期)の売上高を2000億円、営業利益を500億円を目指す野心的なものである。
 東映アニメーションの売上過去最高は2025年3月期の1008億円、つまり5年間で売上高を倍にする目標だ。営業利益も今期予想260億円のほぼ倍だ。
 現在、アニメーション制作会社では、東映アニメーションの一強状態が続いている。売上高で同社に続くバンダイナムコフィルムワークス、トムス・エンタテインメントの数倍ある。アニメの企画・権利運用の製作会社としても、2000億円となれば業界トップのアニプレックスグループに匹敵する規模だ。さらに2031年以降は、売上5000億円規模も視野にいれているという。日本動画協会の調査によれば2024年の日本の商業アニメ制作企業の全売上は4662億円だから、東映アニメーション1社でこれを上回ることになる。中期経営計画目標、さらに長期的な目標が実現するならば、日本のアニメビジネスの様相は一変するはずだ。

■事業の継続的な成長のカギ 「スタジオ機能」「作品創出」「世界展開」「顧客接点」

 大きな成長を実現する手段として、東映アニメーションは4つの戦略をあげる。「スタジオ」「IP」「地域」「顧客接点」である。
 スタジオは同社の基盤である作品づくりである。すでに国内有数の作品制作力を持つが、これを大幅に強化する。現在は東京にある大泉スタジオとフィリピンのTAPの2つが制作拠点だが、大泉スタジオのスタッフの数百人規模での拡大を掲げる。また大阪スタジオの新設はすでに公表されているが、TAPに続きアジア地域に複数の海外スタジオを新設するとしている。国内で不足する人材を海外で求める。

 IPは作品の創出にあたる。東映アニメーションのライセンスビジネスは『ワンピース』や『ドラゴンボール』など少数のロングラン作品に依存が高いことが課題である。国内外を目指せる新規作品を目指す。5年間で700億円を作品に投資する。

 そうした作品は日本だけでなく、海外に向けているのも重要な点だ。ヨーロッパ、北米、中国の3大市場から東南アジア、中南米への展開、さらに中近東、インド、アフリカを視野に入れる。海外拠点も300名規模への拡充を目指す。
 海外は番組・ライセンス輸出だけでなく、現地での作品づくりを目指すのもポイントになっている。日本のアニメ制作のモデルを海外に移植するというわけだ。

 作品を自社で直接ユーザーに届ける視点が、「顧客接点」だ。アニメ企業はこれまで作品の制作や販売、ライセンスなどは手がけることは多かった。しかし、ここでは国内ストアやイベントなどにより自社が関わり、それを国内、そして海外に広げていくとする。
 東映アニメーションは、アニメ業界では特別な存在である。アニメ企画・出資・ライセンス等の「製作」と作品を生み出す「制作」が分断されがちな業界で、制作を基盤に企画・出資・ライセンス・海外などを自ら手掛けることで急成長してきた。「製作」と「制作」を絶妙に融合させてきたのが成功の理由だ。
 現在、大手制作会社が製作進出を強め、製作会社は制作スタジオを次々とグループ会社とすることで、業界全体が東映アニメーションのモデルに近づきつつある。そうしたなかで打ち出した「VISION2030」は、アニメーション制作の海外展開、スタジオの大幅拡充も含め、これまでにない新しいアニメ企業の姿を提示する。

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