東宝グループでフィルム現像や編集などを行ってきた株式会社東京現像所が、2023年11月30日に全事業の終了を報告した。1955年に設立の老舗企業が68年の長い歴史を閉じた。
事業終了の理由は、映像技術の大きな変化だ。東京現像所が長年、主要事業としてきたフィルム現像は、映像のデジタル化と共にほぼ姿を消している。劇場上映用デジタルデータ(DCP)制作や編集、ポストプロダクション、デジタル映像による色彩調整(DI)などに事業の軸を移したが、東宝グループの中では他企業と重複する部分もある。そこで現在の事業の多くを終了し、または関連企業に移管することで再編することになった。
DCP制作は、2023年3月31日にすでに終了している。そして映像DI事業、映像編集事業は11月30日で終了、12月1日よりTOHOスタジオに移管される。
そのなかで大きな関心が集めていたのが、東京現像所が顧客から預かっていたフィルム原版の行き先だった。当初はフィルム原版の保管業務はどの企業にも引き継がれず、全て顧客に返還するとしていた。
その数は2万本ともされていたが、所有者への返還手続きが進んでないもの、権利者が不明なものも少なくなかった。返却が出来ない場合は破棄対象になるともしていた。これに対して貴重な文化資産が失われるとして、懸念の声があがっていた。
11月30日の発表では、最終的には破棄処分とはしなかったようだ。権利者の確認できなかったフィルム原版は映像デジタルアーカイブ事業として、同じ東宝グループのTOHOアーカイブが引き継ぐことになった。
今後も何らかのかたちで、原版は保存されていくことになりそうだ。一方で権利者不明の問題は解決されず、仮に保管が続いても、映像や作品としての活用はハードルが高いと見られる。