広島市を舞台にあらたなアニメーションイベントが、2022年夏に開催されることになった。2021年4月22日、広島市が発表した「総合文化芸術イベント基本計画」にて明らかになった。
広島市は2022年より「平和」と「音楽」、「メディア芸術」をテーマにした「ひろしま国際平和文化祭」を実施する。このメディア芸術部門の軸として「ひろしまアニメーションシーズン」が設けられる。
ひろしまアニメーションシーズンは、アワードや公募作品によるコンペティション、アカデミック・教育プログラムなどから構成される。イベント全体の総合プロデューサーに藤木清治氏、メディア芸術部門プロデューサーに株式会社ニューディアーの土居伸彰氏、ディレクターには世界的なアニメーション作家である山村浩二氏が就任する。
広島市では1985年から2020年まで、2年に一度、広島国際アニメーションフェスティバルが開催されてきた。主催者のひとつであった広島市はより広い領域を取り込むためのイベントの刷新を掲げフェスティバルを前回で終了していた。ひろしまアニメーションシーズンが後継イベントの位置づけになりそうだ。
ひろしまアニメーションシーズンは、一般的な映画祭に近い内容が想定されている。21年8月18日から22日の4日間の本開催を目指し、軸になるのは「コンペティション」、「アワード」、「アカデミー」の3つだ。
コンペティションはアジア、アメリカ、オセアニアの作品を中心とした「環太平洋(パンパシフィック)コンペティション」、作品ジャンルに個性を持たせた「ポシビリティーズ コンペティション」が置かれる。これまで見落とされがちだった部分にスポットライトを当てることで、急増する世界のアニメーション映画祭との差別化を図る狙いがみてとれる。
「ひろしまアワード」は、米国アカデミー賞をモデルにした日本作品の顕彰になる。部門別の作品賞や職種別のスタッフ賞、特別賞などを想定している。応募制をとらずに、キュレーター・チームと推薦人たちによる投票やディスカッションによる推薦制を採用する方針だ。
コンペティション、アワードは22年8月の本開催でのイベントになるが、「アカデミー」は春から秋にかけてのプログラムを目指している。アーティスト・イン・レジデンスを利用した作家サポートのほか、市民向けプログラム、さらにファンや関係者に向けたカンファレンスやトークも実施する。アヌシー国際アニメーション映画祭と連携することで、アニメーション業界における女性の地位向上を目指す「ウーマン・イン・アニメーション」を招聘する。
このほか連携イベントとしてアニソンアーティストのライブや、ひろしまアニメーションシーズンキュレーター・チームによる特別プログラムも展開する。アワード受賞作品の上映・展示、周辺文化も含めたコラボレーション展示やトークも予定する。
ひろしま国際平和文化祭の本開催は音楽部門、メディア芸術部門とも22年8月だが、21年より約2年間、長期間にわたりプログラムを実施していく。メディア芸術部門では、既存の広島国際映画祭、asoviva!cinemaといったイベントとの調整も進める。
会場は広島市内各地域、事業費はひろしま国際平和文化祭全体で2億円を想定する。行政などの助成金のほか、民間企業などの協賛金、クラウドファンディングなどで確保する。当面は2年に一度の継続的なイベントを目指す。長期的視野を持った大掛かりな取り組みになりそうだ。