米国アニメーション界で広く知られるアニー賞の2020年第48回の長編アニメーション部門のエントリールールが大幅に変更される。8月24日に、アニー賞を主催する国際アニメーション協会ハリウッド支部(ASIFA-Hollywood)が決定した。
アニー賞は米国で公開された作品を対象にすることからアニメーション界のアカデミーと呼ばれ、毎年世界中から注目されている。映画やテレビ、CMやゲームまで幅広いアニメーションを対象とし、30部門以上を設ける。
8月24日にASIFA-Hollywoodは、2020年のアニー賞のスケジュールを発表した。世界各地で猛威を振るう新型コロナウイスル感染症の広がりは映画業界に大きな影響を与えているが、アニー賞も例外でない。
まずアワードの実施スケジュールが大幅に変更される。アワードの日程は、例年に比べて2ヵ月ほど後倒しされる。エントリー受付開始が2021年1月4日、〆切りが2月1日になる。3月3日に各賞ノミネートを発表する。
さらに受賞者、受賞作品が発表される授賞式は、4月16日の予定だ。ただし会場を使用したセレモニーとするかオンライン開催になるかは、現段階で未定だ。
これに関して米国エンタテイメントビジネスメディアのハリウッドレポーター誌は、長編映画部門のエントリー条件も大きく変わると伝えている。
長編部門はメジャースタジオによる大作を対象にする長編アニメーション賞と長編アニメーション(インディーズ)賞の2つが設けられている。これまでは劇場公開数に基づいて1000スクリーン以上を長編アニメーション賞、999スクリーン以下を長編アニメーション(インディーズ)賞の作品に分けていた。
しかし3月以降、映画館が大幅な休止・営業自粛をしており、大作映画でも公開規模が縮小されたり、ウェブ配信のみに移行した作品もある。このためスクリーン数での基準を止める。
新しい基準は、製作予算に基づくとしている。長編アニメーション賞は製作予算が4千万ドル(42億円)以上でその60%以上をメジャースタジオや企業が出資している必要がある。米国商業公開は必須でなく、2020年の間に米国で一度以上の観客に向けた上映、もしくはアニー賞が公認した国際映画祭での上映が必要となる。
逆に製作予算4千万ドル以下は長編アニメーション(インディーズ)賞になる。こちらは劇場公開が必須条件でなくなる。日本をはじめ海外作品にも広く門戸を広げることになる。ただし60%以上の製作出資がスタジオ、もしくは企業である作品としている。自主制作映画などは外される。
新しい基準の採用で、エントリー可能作品は一挙に広がりそうだ。ひとつは長編アニメーション賞で、これまで対象とされてこなかったNetflixオリジナル映画などの配信作品が含まれる。特別な映画興行をしなくても、一度の上映があればエントリーが可能になる。劇場公開を断念して、配信映画に移行した作品も救済する。
もうひとつは、海外作品である。米国での上映がなくとも、長編アニメーション(インディーズ)賞ではたとえば日本からでもエントリーが可能というわけだ。日本には製作予算で42億円を超える作品はほとんどなく、対象は長編アニメーション(インディーズ)賞にほぼ限られそうだ。
さらに出資の60%をスタジオか企業が出資することを条件にしたことで、政府系の助成予算が大きなヨーロッパ作品の一部はエントリーが厳しくなりそうだ。