タイム・ワーナー、映像ビジネスに特化したシンプルな事業構成が買収理由か

タイム・ワーナー

情報通信の巨大企業AT&Tがタイム・ワーナーの買収で合意したとのニュースが、エンタテインメント業界に衝撃を与えている。現金とAT&T株式への交換を組み合わせた854億ドル(約8兆9000億円)の買収金額は、2016年に発表された世界のM&Aでは最大だ。
AT&Tは固定通信で全米最大、携帯通信で第2位、このほか衛星放送のディレクテレビなど数多くの情報・通信事業を抱える。時価総額は約23兆円、米国トップ20に入る巨大企業である。一方タイム・ワーナーは映画、テレビ番組、コミックなどからなるメディアコングロマリットで、この分野ではコムキャスト、ウォルト・ディズニーに続く第3位だ。
両社は合併による利点に、メディアとコミュニケーションの分野で新たなイノベーションが生み出せること、新たな顧客にリーチ出来ることなどを挙げている。つまり、AT&Tの巨大なネットワークで、タイム・ワーナーの持つ豊富な映画、テレビ番組を届ける。情報通信インフラとコンテンツの融合である。

メディアコングロマリットとして知られるタイム・ワーナーだが、今回の買収でその事業をあらためて見直すと、意外にシンプルであることが分かる。主要事業は3つから構成されている。まず有料チャンネルのHBO、そして放送事業であるターナーはTBS、CNN、カートゥーン・ネットワークなど、最後に映画・テレビのワーナー・ブラザースである。
コングロマリットと呼ばれているが、ほとんどが映像事業に関連しており、アメリカンコミックスの大手DCエンタテインメントが目につく程度だ。これも映画・番組の原作の供給元と考えれば映像に直結している。

一方で映像事業だけを取り上げれば圧倒的な存在感である。HBOは米国では有料ケーブルチャンネルでは最も視聴者数が多い。また映画専門チャンネルのCinemaxもHBOのチャンネルのひとつである。
ターナーはTBS、世界で有数のニュースネットワークCNNを持つ。アニメ関係者にはカートゥーン・ネットワークやアダルトスイムがお馴染みだろう。
そしてワーナー・ブラザースは、最も多くの事業を持つ。映画ではワーナーブラザース・ピクチャーズ、ニューラインシネマがあり、「ハリー・ポッター」シリーズ、「バットマン」シリーズ、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなど数多くのヒット作がある。さらに映像ソフト、配信、ゲーム、アニメーション、キャラクター商品など映像から派生するあらゆるビジネスを網羅する。米国2大コミック出版のDCコミックスもグループ傘下だ。Huluの株式の10%も保有する。

現在のタイム・ワーナーの事業構造は、80年代以降に繰り返されたワーナー・ブラザースの合併と事業分割の歴史に理由がある。とりわけ2000年に世紀の合併と報じられたAOLタイム・ワーナーの失敗の影響が大きい。
タイム・ワーナーの社名の頭につく「タイム(Time)」の文字は、1990年にワーナー・コミュニケーションと老舗出版社タイムが合併したことに由来する。出版と映像の融合として世の注目を集めた。しかし、出版部門のタイムは2013年に事業分割で再び独立企業となっているため、現在のタイム・ワーナーは雑誌タイムの刊行はしていない。
全米第2位のケーブルチャンネル契約世帯を持つタイムワーナー・ケーブルも同様だ。2009年にやはり事業分割をし、いまはタイム・ワーナーとつながりはない。2004年には世界3大音楽レーベルのひとつワーナー・ミュージックを売却している。
そしてAOLである。2000年当時はインターネットと映像・出版の融合で大きな注目を集めたが、その後に業績が急落、2009年に事業分割をした。タイム・ワーナーの業績の足を引っ張っていると見られたためだ。

この失敗を得て、タイム・ワーナーは多角化よりも映像分野に特化、事業拡大することで業績を伸ばしてきた。そこに目をつけたのがAT&Tというわけだ。これまでの事業再編でAT&Tとの重複事業はほとんどない。一方で、映像分野で圧倒的な力を持つタイム・ワーナーは理想の企業に映る。
「出版と映像の融合」、「インターネットと映像の融合」で苦い経験を重ねたワーナー・ブラザースにとって、「情報通信と映像の融合」が3度目の正直となるか。引き続き関心を集めそうだ。

タイム・ワーナーの主なブランド・事業

■ HBO
  □ HBO (有料ドラマチャンネル)
  □ Cinemax (映画専門チャンネル)

■ ターナー
  □ TBS(総合チャンネル)
  □ CNN(ニュース)
  □ カートゥーン・ネットワーク(子ども番組)
  □ アダルトスイム(ヤングアダルト)
  □ TruTV(リアリティ番組)
  □ TNT(ドラマ)

■ ワーナー・ブラザース
  □ ワーナーブラザース・ピクチャーズ(映画)
    ・ワーナーブラザース・ピクチャーズ
    ・ニューラインシネマ
  □ ワーナーブラザース・ホームエンタテインメント(映像ソフト/配信)
    ・ワーナーホームビデオ
    ・ワーナーブラザース・インタラクティブ・エンタテインメント
  □ ワーナーブラザース・テレビグループ(テレビ番組)
    ・ワーナーブラザース・テレビ
    ・ワーナー・ホライゾン テレビ
    ・テレピクチャーズ
    ・ワーナーブラザース・アニメーション
    ・ブルーリボン
    ・The CW テレビ
  □ ワーナー・ブラザース デジタルネットワーク
  □ ワーナーブラザース・コンシュマー・プロダクツ(商品展開)
  □ DCエンタテイメント(コミックス)
  □ ワーナーブラザース・シアター・ベンチャー(ライブエンタテインメント)

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